慢性腎臓病闘病記【8】-外出先で倒れて実感したカリウム・コントロールの大切さ

<2022.11.04記>

8-1 外出先で倒れた経験,8-2 カリウム,リンのコントール

 

8-1 外出先で倒れた経験

これまで,外出先で倒れた経験が数回ある。倒れたといっても,救急搬送されたというものではなく,気分がすぐれず,数十分から1時間ほど横になっていたという経験である。順序とおりではないが,記憶に残る主なものをあげる。

ア)2022年8月下旬,箱根へ1泊旅行した。ホテルの夕食と・朝食で普段より多く食した。旅行に出かけ,ホテルで食事する際には,おいしいものが沢山でるのでつい食べ過ぎてしまう。こうした際には,食後にカリウム吸着剤ケーキサレートを1/2~1袋,食物繊維と共に服用するようにしている。ケーキサレート1袋の服用は,便秘がきつくなるのでほとんどやらず,1/2袋の方が多い。

翌日は,孫と一緒に,「神奈川県立 生命の星・地球博物館」に行った。館内の展示を見ていて4階まで来たとき,気分が悪くなり,立っていられなくなり,40分程度ソファに横になってやっと回復した。

後日,透析クリニックの管理栄養士さんに,この体験を話すと,「それは,カリウム過多のせいでしょう。カリウム過多で心臓に影響が出たのでしょう。もし,ケーキサレートを飲んでいなかったら,救急車で病院に搬送されていたかも知れませんよ」と言われた。

このような経験は他にもある。

イ)私は2018年に透析生活に入ったが,それを遡ること数年前の2015年の8月のことであったと思う。1泊旅行で行った伊豆のホテルで,夕食や翌日の朝食を普段よりずっと沢山食べた。翌日修善寺見学に出かけ,昼食を取るためレストランへいった。料理を待つ間に気分が悪化して,椅子に座っていられなくなり,レストランのご厚意で,別室のたたみの部屋で1時間程度横になっていて,やっと回復した。その時の脈は酷く低く,まるで脈が無いような状況で,よほど血圧が低下していたと思う。

この場合も,(ア)の場合と同様に,ホテルに1泊し,夕食・朝食も普段より多く,翌日気分悪化して倒れており,箱根旅行の場合と状況が類似している。この時は,かなり慢性腎臓病が悪化していた時期であったが,透析生活に入る前で,まだカリウム吸着剤のケーキサレートは服用していなかった。この頃は,尿泡がかなりひどかったものの,尿は通常量(1000mL~2000mL)出ていたので,カリウムは尿から排出されていたと思うが,今から考えると,やはりホテルでの多食によるカリウム過多の影響が出ていたのではないかと思う。

これらとは少し違う倒れ方もあった。

ウ)2018年3月からの透析生活に入る前のこと(年は失念)であったが,自宅から車で40~50分ほどの所にある日帰り温泉に行った帰りにファミレスに寄り,料理を待つ間に,急に目の前が次第に暗くなり,自分でもこれはやばいと思っているうちに気を失った。同席していた家族の呼びかけで意識を戻した。血圧がよほど低下したのだと思う。この場合は,温泉に入って血圧が低下しすぎたためであろうと思う。

エ)透析後は,お腹がひどくすいているので,いつも帰宅前に街で簡単な昼食を取ることにしている。昼食はできるだけ早く済ませて, 30分に1本の地域バスに乗り遅れないようにしている。時たま,コンビニに寄って,そこの2階にあるイートインで昼食をすますことが ある。ただ,透析後はぐったりしているので,2階にあがることさえ億劫に感じることが多い。 数ヶ月前,透析後のことであったが,久しぶりにコンビニの1階でサンドウィッチとコーヒーを買って,イートインのある2階へトントン と速めに駆け上がった。しばらくすると,気分が悪くなり,椅子に座っていることすらできなくなり,床に大の字で倒れた。床にじかに 寝て汚いとか恥ずかしいとか気にする余裕もなかった。2,30分ほど倒れていたと思う。幸いイートインには,午後2時頃であったので, 客は私の他に誰もおらず,そのため恥ずかしさは免れたものの,さらに悪化した場合,どなたかが来てくれて助けてくれればよいがと ちらっと思ったことは否めない。近くに置いたカバンの中のスマホを取りだして,誰かに連絡を取ろうとも考えたが,体が動かなかった。 この場合は,カリウム過多によるよりも透析後で血圧が低めになっているところに,階段を速く駆け上がって,さらに血圧が低下しため と思われる。なぜなら,過剰なカリウムは,透析で除去されているからである。 (後に,このことや,帰りのバスの途中で血圧が下がって気持ちが悪くなってうずくまったり倒れることが心配であるので,バスに乗る ときは,必ず座れるようにバスを待つ列の前方に並ぶようにしている旨を看護師さんにお話ししたところ,午前9時少し過ぎたころから 始まる透析が終わって帰宅する午後1時過ぎから1時半過ぎ頃に血圧が上がるように,数時間前の午前11時に血圧をあげる薬が毎回処方 されることになった。こうすると,透析中に血圧が下がっていても,終了時には血圧が150くらいになって,帰宅途中で倒れる心配はない と思う。なお,最近は,透析中にお腹がすくので,お菓子を50~60g程度食べるようにしているが,何か食べると血圧はより低くなるので, 血圧昇圧剤の処方はありがたい。 これらのこともあって,カリウムとリンの管理に意識が向いてきた。カリウムやリンのコントロールを今年(2022年)の目標の一つにした。

 

8-2 カリウム,リンのコントール

透析しているクリニック(以下,透析クリニック)では,管理栄養士さんから,カリウムやリンが過多で危険であると常日頃注意されることが多い。それを改善するため,今年(2022年)は,5月中旬より,透析クリニックから処方されるカリウム吸着剤ケーキサレート(ケーキサレート ドライシロップ76%,有効成分2.5g含有)およびリン吸着剤(炭酸ランタンOD錠250mg)毎日それぞれ朝・昼・夕に何錠(何袋)服用したか,記録を取るようにした。こうしたことをある程度の期間続けることにより,血液検査の結果と合わせて,カリウム,リンの吸着剤の量の適正値を把握することができる。自前で購入して服用している塩分吸着剤デルソルについても,毎日の服用量の記録を取っている。透析生活に入ってから4年と数ヶ月経過して,この頃やっとカリウムやリンのコントロールをこれまでよりも厳格にしようという心の余裕が生まれてきたと言ってもよい。なお,ケーキサレートは,便秘を避けるために,必ず食物繊維と一緒に服用している。この記録は毎日の食事内容を記録する食録表(筆者ブログ「慢性腎臓病闘病記(2)-人工透析生活の実際」参照)に記録欄を追記した。

血液透析開始以降の血液検査結果から,カリウムとリンの値の変遷をグラフにして下に示す。血液検査は透析クリニックで,ほぼ2週間おきの火曜日に行われる。

グラフ8-1に,血液検査によるカリウムの変遷(2018 3/6~2022 10/25)を,図8-1にグラフ8-1の一部(2002年)のカリウムの値を示す。

また,表8-1に2022年に入ってからのカリウム値の変遷を示す。「基準範囲B」内にあるカリウム値は青色で表示してある。

                                                       グラフ8-1 カリウムの変遷 

縦軸は血液検査におけるカリウム値(mEq/L),横軸は検査日を表す。グラフの緑色は血液検査のカリウム値,青い直線はカリウムの「基準範囲A」(3.5~5.0mEq/L),橙色の直線はカリウムの「自分なりの基準範囲B」(4.0~5.9mEq/L)を示す。

              

              表8-1 カリウム値の変遷

                                

血液検査のカリウム値の最近の状況は6mEq/L前後が多い。6.5 mEq/L以上の日もかなりある。管理栄養士さんから,カリウムが多すぎるとしばしば注意されている。血液検査のカリウムの適正範囲は3.5~5.0 mEq/Lである。これを「基準範囲A」とする。5.9以下はまず安全,6.0~6.4は要注意,6.5以上は危険とされている。ただ,管理栄養士さんのお話によると,近年では,カリウムの適正範囲の上限は5.0 mEq/Lより少し高めが良いとされているようである。また,カリウムは低すぎても心臓に悪く4.0mEq/L以上が望ましいそうである。そこで,自分なりのカリウムの適正範囲を4.0~6.0 mEq/Lと考えることにした。これを「基準範囲B」とし,血液検査のカリウム値がこの基準範囲Bに収まるように心がけることにした。

カリウムは透析で除去されるので,透析が1日空けの場合,非透析日にカリウムが体内に蓄積されても,翌日には透析で除去されるので,あまり心配いらないであろう。しかし透析が2日空けの場合,土曜日の透析直後から2日空けの次の透析日の火曜日朝までカリウムが蓄積するので危険である。そこで,これまでの数ヶ月は,土曜日と日曜日に,夕食時にケーキサレートを1/2錠ずつ服用するようにしていた(服薬を忘れることもままあった)。しかし,「カリウムの変遷」のグラフに見るように,血液検査のカリウム値は適正範囲より高い場合が多かった。

これまでの食録表を見ると,カリウムの摂取量は,朝食が1000mg,昼食が900mg,間食が300mg,夕食が800mgで1日の計が3000mg程度の日が多い。以外にも,朝食のカリウムは昼夕のカリウムよいが多いが,それは朝食でコーヒーや野菜ジュースなどを摂るためであると思う。コーヒーは,260mL1杯でカリウムは370mg程度もある。コーヒーは好きなので,1日2杯以上飲むので,これだけでカリウムは740mgにもある。 また,外食すると摂取カリウムが多くなる場合が多い。

透析が1日空けの場合,透析後の昼・食・夕食および翌日の朝食,翌日の昼・食・夕食および翌翌日の朝食の2日分のカリウム,約6000mgが体内に蓄積する。次の透析日の前日夜には,5000mgのカリウムが蓄積している。また,透析が2日空けの場合はこれに更に1日分が加わって約9000mgのカリウムが体内に蓄積することになる。次の透析日の前日夜には,8000mgのカリウムが蓄積している。カリウム摂取の適正量は2000mg/日とされているので,8000mgは適正値の4倍にもなる。これではやはり危険なのであろう。特に透析が2日空けの場合は,カリウム吸着剤の服用が必要になる。

カリウム吸着剤やリン吸着剤の適正量をさぐるために,透析クリニックで2週間おきに実施される血液検査を利用することにした。私のお世話になっている透析クリニックでは,原則として2週間おきの火曜日に血液検査が行われる。

そこで火曜日から翌週の月曜日までの1週間ごとに,カリウム吸着剤とリン吸着剤の合計服用量を記録し,2週間おきに,これらの量と血液検査のカリウムと無機リンの値を比較しながら,これらの適正量を探ることにした。今までどうしてこの方法に気づかなかったか,自分でも不思議に思う。

具体的には,9月中旬からは,朝食時を含めてケーキサレートを少し増やすことにし,次のように工夫した。

土曜日は,昼・夕 各1/2袋~1袋

日・月曜日は,朝・夕 各1/2袋~1袋

その他の外食時は,1/2袋~1袋以上

その結果,9月中旬以降では,2週おきの火曜日の血液検査において,カリウム値が適正範囲に収まるようになった。

リンについては,図8-2 に血液検査によるリン量の変遷(2018 3/6~2022 10/25)のグラフを示す。また,表8-2に2022年に入ってからのリン値の変遷を示す。基準範囲内にあるリン値は青色で表示してある。

      グラフ8-2 リンの変遷 縦軸は血液検査におけるリン値(mEq/L),横軸は

       血液検査日を表す。グラフの折れ線は血液検査のリン値,青い直線はリンの

       「基準範囲」(2.5~4.5mEq/L)を示す。

               表8-2 リン値の変遷

血液検査のリン(無機リン)値の適正範囲は2.5~4.5 mg/dLである。「リン値の変遷」のグラフから,最近の状況は,リンは少し高めになっている。管理栄養士さんからは,私のリンの管理は比較的うまくいっているとのことである。基準範囲から大きくずれて困っている患者さんいるとのことであった。これは個人差が大きいらしい。

これまでは,リンの吸着剤を毎朝・昼・夕2錠ずつ服用すると,血液検査のリン値は下がり過ぎ,そこでリンの吸着剤を減らして毎朝・昼・夕1錠ずつ服用に変えると,今度は上がりすぎになるというくり返しが見られた。2錠ずつ服用と1錠ずつ服用の間が望ましいことになる。

そこで,9月中旬より,リン吸着剤は,朝は常に1錠,夕は常に2錠ずつ,その他の外食時は2錠以上に変更した。ステーキを食べた時などは4錠位に増やして,服用にメリハリをつけている。その結果,9月中旬以降は,2週おきの火曜日の血液検査において,リンの値が適正範囲に収まるようになった。

こうして,やっと自分の食時スタイルに合うカリウムとリンの服用方法を把握するに至った。

(2022年11月4日記)