Ⅱ.   事前の動き-各種調査団の派遣  

8.プロジェクト形成調査団と基礎調査団の派遣

8-1.プロジェクト形成調査団

1995(平成 7)年 4/2~4/19にわたり,内海成治氏(JICA)を団長としたプロジェクト形成調査団がイ国に派遣された。資料が無いので詳細は割愛する。

8-2.基礎調査団    

1994(平成8)年11/29~12/6 にわたって,プロジェクト形成調査の調査結果を踏まえて,基礎調査団がイ国に派遣された。調査団はインドネシアにおける初中等理数科教員養成の現状及び問題点の把握・整理を目的とし,協力範囲,実施体制,プロジェクト活動と成果の関連,関連プロジェクトについて,関係諸機関と協議を行った。

団員構成は,団長・総括担当の内海成治氏(JICA),教育行政担当の三村洋史氏(文部省),教育計画担当の大隅紀和氏(京都教育大学),協力企画担当の原智佐氏(JICA)の4名であった。同団は, 11/30 教育文化省との協議,12/2 教員養成大学等の視察,IKIP バンドンおよび PPPG バンドンとの協議,12/5 教育文化省初中等教育局との協議並びに BAPPENAS との協議を行い,12/6JICA ジャカルタ事務所・日本大使館への報告後,帰国した。

基礎調査団報告(国際協力事業団社会開発協力部 1996)から,主要な点を抜粋する。

『本件についてはインドネシア側の要請内容に,非有資格教員の再研修,新卒教員養成のための体制の強化,という二極が包含されており,この要請に対しプロジェクトの目標として何を設定するのかを明確に整理しない限り,具体的な協力計画案の策定は困難な状況であった。本調査はこの問題点を踏まえ,詳細調査を通して現状把握を行おうとしたもので,下記の基本方針に沿った調査及び協議を目的として実施された。

  • 要請案件の教育セクターにおける位置づけを明確にし,併せて案件の具体化

に必要な諸条件を調査する。

  • インドネシアにおける日本の教育分野の援助は,従来,高等教育及び技術・職業訓練

に対して行われてきたが,途上国全般における基礎教育の重要性の認識,前期中等教育の義務化などを受けて,今後,基礎教育の拡充に資する援助を検討していく必要がある。

本基礎調査団は,要請プロジェクトにおける現職教員再訓練・新卒教員養成の比重,現職教員再 訓練における教員養成大学の役割など,実施上の問題点について,協力範囲,実施体制,プロジェクト活動と成果の関連,関連プロジェクトなどについて調査と協議を行った。』

詳細は割愛する。

9.事前調査団の派遣

1997(平成9)年4/2~4/12 にわたって.事前調査団がイ国に派遣された。この調査においては,国立教育大学 (IKIP)と国立教員研修センター (PPPG)との連携,プロジェクトサイト,活動内容の絞り込みの3点が主な課題であった。本調査は,Jakarta ,Bandung ,Yogyakarta ,Malang で実施された。

団員の構成は総括・教育行政担当の内海成治氏(文部省,大阪大学),理科教育担当の筆者(東学大),数学教育担当の橋本吉彦氏(横国大),技術協力担当の須崎毅浩氏(JICA),協力企画担当の比嘉京治氏(JICA)であった。この調査においては,私たちは JICAインドネシア事務所の教育顧問のウトモ氏 Mr. Oetomo  Djajanegara  (Secretary, CPIU: Central Project Implementation Unit)も同行して,3大学の理数科棟や機材の状況などを視察した。ウトモ氏はイ国の高等教育の生き字引といわれた人物である。

調査団は,教育文化大臣,高等教育総局長・初中等教育総局,BAPPENAS,日本大使館,PPPGバンドン,IKIPバンドンを表敬し,PPPGバンドンとの協議,地域内 BPG,SD,SMP,学校現場の視察,IKIPジョグジャカルタおよび PPPGジョグジャカルタの訪問・協議,運営委員会(仮称)との協議,教育文化省内でミニッツ(覚書)を署名した。最後に日本大使館,JICA 事務所に報告して帰国した。

9-1. 事前調査団の調査結果

今回の事前調査においては,国立教育大学 (IKIP),国立教員研修センター(PPPG) との連携,プロジェクトサイト,活動内容の絞り込みの3点が課題であった。

1)IKIPとPPPGの連携

IKIPとPPPGとの連携に関しては,イ国側から本プロジェクトのカウンターパート機関としてはIKIPのみとしたい旨の要請があった。その背景として,PPPGには本プロジェクトと同内容の支援をアジア開発銀行(ADB)が検討中であることが確認された。そのため,具体的な活動においては PPPGとの連携が必要なことを確認して,カウンターパート機関としてはIKIPのみとすることになった。この件に関しては,協議に同席した初中等教育総局長も了承している。

2) プロジェクト・サイト

プロジェクト・サイトに 関しては,l K.IP Bandung にプロジェクトオフィスを置き,IKIP Yogyakarta とIKIP Malang においても活動を実施することで合意した。

3)活動内容

活動内容に関しては,教科教育法と実験指導及ぴ授業研究の指導を中心とし,カリキュラム等への直接的アドパイスは行わないことで合意した。しかし,詳細な活動内容と各専門家のIRについては,今後の実施調査団派遣までに検討する必要がある。

教育文化省,各IKIPとも本件の実施に関しては極めて意欲的であり,高等教育総局長は本プロジェクトに必要なローカル・コスト負担に関しては,問題はないことを明言している。

以上についてイ国側関係者とも協議のうえ,4月10日に,本プロジェクトの実施にかかるイ国側責任者である教育文化大臣の代理者として高等教育総局長とミニッツにより署名を取り交わした。

なお,1)協力要請内容の再確認,及び  2)日本側の協力の対象・範囲の検討にかかる調査結果は,次のとおりである。

1) 協力要請内容の再確認

初等教育レベルでは約80万人,中等前期レべルでは約30万人,中等後期レベルでは約15万人の現職教員の資格向上が必要である現状において,資格附与を行えるIKIPでの現職教員研修(In-Service Teacher Training) の重要性は高 く,その機能強化のための日本への協力要請は合理的なものであると判断される。

また,質の低い学部卒業生が次々と生み出される中で現職教員研修のみを充実させても理数科教員の資質向上にとって十分であるとは言えず,その意味で初中等理数科教育の改善方策として学部教育(Pre-Service Training)と密接に結びついた理数科教員の質的拡充のための方策をも考慮する必要性がある。

2) 日本側の協力の対象・範囲の検討

イ国側による長期的な初中等理数科教育拡充計画 (Growth Center 構想)では,既に小中学校レペルについては円借款及ぴ世界銀行へ, PPPGレベルについてはADBへとそれぞれ支援を要請する方針が定まっており,日本に対してはIKIPレペルにおける初中等理数科教育改善のための活動支援が強く求められている。

なお,日本側による投入規模の制約及び効率性の観点から,イ国側からの要請にある 3 つのIKIP (Growth CenterとしてのBandung,Yogyakarta,Malangの3 校)に対し同規模で協力を実施することが日本側として困難であるという事情により,本調査団は実施体制が比較的整っていると判断されるIKIP Bandung をプロジェク卜拠点としつつ,他の2 つのIKIPへも必要な支援を巡回指導等の形で適宜行うことの可能性について調査し,イ国側の要望案とのすり合わせ検討を行った。

各1KlPについての調査結果は次のとおり要約される。

IKlP Bandung :

修士号,博士号を有する教官が多く,レベルは高いと思われるので相応の日本   人専門家の派遣が必要と思われる。施設は広さ及び老巧化の観点から建替えが必要で,日本への無償資金協力要請における施設建設計画では現在の理数科教脊学部の4 学科(数学,物理,化学,生物)はすぺて新設施設に移転の予定である。

施設建設予定地の地盤調査をはじめ ,本プロジェクにかかるIKIP側でのPDM作成を検討しているなど日本への協力要請内容に対応するIKIP側の準備は順調に進捗していると認められる。

基礎的な理科実験機材は,ほとんど無いか圧倒的に不足している。また上級学生向けの実験用,研究用機材もほとんど無い。理科教員養成のための基礎実験をきちんと実施できる体制とするべきと思料される。

IKIP Yogyakarta :

数学教科を担当する PPPG Yogyakarta との連携体制が良好である。施設は世銀の援助により化学教育学科の施設を除き建設済で,理数科教育学部の 4学科(数学,物理,化学,生物)のうち数学教育学科の実験室は大きなスペースを有している反面,機材は展示の形式で設置されており活用が不十分である。 Growth Center構 想により,研究開発とカリキュラム革新,現職教員研修,教材開発,講義監督,学校間協力,人的交流,研究雑誌の発刊,インターネットの8項目で理数科教育の拡充を検討しており,理数科研究雑誌については 1996年にNo. l~ No.2 の発行実績がある。

全体の所感として,純粋な数学教科のみならず教育法も念頭に置いた教員養成のあり方を指導する必要がある。

IKIP Malang :

教官のレベルは高く,特に生物教育学科は,隣接するBrawijaya大学と協力を保ち博士課程を有するなど優秀である。施設は既に世銀の援助により建設され実際に授業に使用されているが,学部の大きさに見合う施設内の設備や機材が絶対的に不足している。将来的には本校は一般大学化を目指しているが,一般大学への移行は理数科教育学部の充実が達成され得る後(早くとも10年後)のことと関係者側では想定している。現在の4学科(数学,物理,化学,生物)に加え,地学と情報教育の2学科を増設を希望している。また,現職教育の充実も希望している。

また,イ国側のプロジェクト実施体制の確認,日本側協力計画概要の検討,今後の協力実施スケジュールの確認,等の調査事項について,本調査団の見解は次のとおりであった。

現況では,イ国側の策定した理数科教育拡充の全体計画に照らし本プロジェクトの位置付けと役割を考えた場合,日本側による協力の焦点をI KIPレベルに据え,現職教員研修に比重を置きつつも学部教育も含め理数科教員養成機能の拡充を目的とすることが妥当であると思料される。

イ国側の小中学校レベル,PPPG レベル,IKIPレベルでの援助機関の区分設定において,PPPGはADBが協力を担当することになるが,現在行われているADBのフィージビリティ調査の推移を見つつ,これと適切な連携を図る必要がある。

本調査によって,日本による本プロジェクトの協力範囲の大枠と活動の概要に   ついて合意することができたが,実施協議調査の派遣に先立ち各援助機関の本分野にかかる協力計画とその実施体制を確認しながら具体的な協力計画を策定する必要がある。

9-2.事前調査団に参加して(筆者の分析-現職教員教育・課題等)

 次に,筆者がこの事前調査団に参加して知り得た3大学おける現職教員教育の様子,とりわけイ国側が理数科教育について,どのような教育改革を目指していたかという点や,筆者が感じた課題などを述べることにする。

9-2-1 要請の背景

 イ国のIMSTEP要請の背景について,イ国の理科教育事情(教員資格)や教育大学の様子について,理科教育分野を中心に現地調査から明らかになった点をここに記す。

9-2-1-1. インドネシアの理数科教育事情-理科教育-

イ国においては,工業化を通して経済発展をはかるため,科学技術の役割が重要であると認識している。また,科学技術の修得と発展は基礎科学の発展に依存しており,そのため,学校における理数教育の改善が急務であるという認識に立っている。

イ国における初等・中等の理数科は,教員養成機関(IKIP/FKIP)の理数教育学部/学科(faculties/departments)で養成されている。理数的内容は,小・中学校においては統合化された形で教えられ,また高等学校においては,物理,化学,生物の3教科に分かれて教えられている。

表 Ⅱ-1   イ国における有資格・無資格教員の割合

毎年実施される国家教育評価の結果によれば,初等・中等の両段階にわたり,理数科は達成度が低いことが明らかになっている。この低達成度は,小・中学校における教授・学習実践が不十分であること,中でも,未資格教員が多いことと,教師の資質が不十分であることによると考えられている。

公立学校における教員の有資格・無資格の割合は,教育コンソーシアム(the Consortium of Education)による 1991 年の研究によると,下表(表Ⅱ-1)の通りであり,無資格教員の割合は全体的に高く,特に小・中学校における無資格教員の割合が際立っている。

近年(1992),イ国では,免許法改定により,教員免許の基礎資格が表 Ⅱ-2 に示すように上昇した。この事情は,これまでの報告書に述べられている。

こうしたことから,イ国では,初等・中等段階の理数教育の改善が必要であり,なかでも,教師の資質の向上が求められている。

表 Ⅱ-2   教員基礎資格の変化

9-2-1-1-1 教育大学の規模,レベル等

イ国の教員養成は,公立と私立があるが,国立の教員養成機関としては,教育大学(IKIP) が全国に10 校設置されている。その内,本プロジェクトの受け入れ機関に予定されている大学は,バンドン教育大学,ジョグジャカルタ教育大学,マラン教育大学の3大学であり, それぞれ,首都ジャカルタのあるジャワ島の西部,中部,東部の主要教育大学である。

教育大学の理数教育学部(FPMIPA)の規模はかなり大きい。マラン教育大学理数教育学部を例にとると,教官数は,1997 年 4 月視察時においては,

数学教育学科   47 人,物理教育学科   45 人,化学教育学科   43 人,生物教育学科   51 人の計 186 人であり,

その内,

博士課程修了   12 人,修士課程修了  104 人,学部卒  72 人

とされている(2名のずれがある)。職階は,教授,助教授,講師長,講師正,講師,副講師,講師補,助手,副助手となっている。教授は3名程度である。博士学位取得者は未調査である。また,37人が,外国の修士課程及び博士課程に在籍中とのことであった。

マラン教育大学の理数関係の学生数は,

数学教育   351 名,理科教育(物理,化学,生物) 1425 名,理科教育の現職教育(各種計)   61 名

である。バンドン教育大学もほぼ同様な規模と考えられる。

視察したバンドン教育大学およびマラン教育大学の状況について,印象を述べる。

バンドン教育大学,マラン教育大学共に,教官のレベルは,かなり高いと思われる。修士号,博士号を持つ教官も多く,相応な専門家の派遣が必要と思われる。しかし,理科教育に関する限り機材が不足しており,理論的な内容に偏っていると思われる。教官の研究能力は未知である。米国で修士以上の教育を受けた教官が多いようである。学部長は,日本留学組も増やしたいと希望している。

優れた理科の教師を養成するためには,両教員大学とも,物理学,化学,生物学,地 学の学生基礎実験を,きちんと実施する必要性を感じる。また,上級の学生実験機材が貧弱である。研究用機材はほとんどない。

次に,特にマラン教育大学について,現在,抱えている問題点は,次のようなものがある。

  • スタッフの質向上
  • 教授・学習用および特に純粋数学・科学研究用機材の質的および量的不足
  • 資源(教科書,定期刊行物および学術雑誌)の質的および量的不足

これらは,マラン教育大学のみならず,イ国全体に共通するものと思われる。

1977 年度におけるマラン教育大学理数教育学部所属の講師(lecturers)陣の教育水準については,要請書によると,以下の表(表Ⅱ-3)の通りである。表中,「純粋」は純粋科学専攻(数学,理科),「教育」は数学教育学あるいは理科教育学専攻を表す。また S3,S2,S1 は, 表Ⅱ-2 に示されているように,それぞれ,博士課程修了,修士課程修了,学部卒業をさす。この表は,教官のイ国・日本における研修計画策定の参考となる。

マラン教育大学理数教育学部では,表Ⅱ-3 に示されているように,全体的に S3 レベルの教官が少なく S2, S1 の教官が多いと思われる。特に純粋科学専攻教官では,S1 が少ないことはよいが,S2 が多く,また S3 は少ない。すなわち,S2 が主となっている。これに対し,教科教育専攻教官では,S1 が主となっているのが問題である。S1 はむしろ,少数であるが,純粋科学より教科教育専攻教官に多い。この事情は日本と類似している。ただし,日本では,純粋科学専攻の教官はほとんど S3 レベルであり,教科教育専攻の教官もS2 レベル以上である。こうした「ずれ」は,教科教育学自体が,比較的新しい分野であり,そのためもあって研究者養成機関が整備されていないためである。イ国でも,事情は同様と考えられる。S3 の人数が博士課程単位修得退学者を表すと思われるが,博士学位を取得したか否かは不明である。実際に必要なのは,博士学位取得者の割合を高めることである。特に教科教育学(数学教育学,理科教育学)の博士レベルの研究者養成は,日本でもやっと,1996 年に至って,教員養成大学に連合博士課程が設置されたが,それ以前は広島大学,筑波大学などで若干養成されていたのみである。また S2 修了者が論文博士取得制度によって,博士学位を取得する道がイ国内にあるか否かは,今後の調査に待ちたい。

これまで,日本では,純粋科学研究と教科教育研究が分離してしまっている傾向があった。両者がつながらなくてはならない。科学の進歩は早く,教育内容の改善も常時必要とされるが,しかし一方で,子供の発達段階や学習心理学的な側面を無視することはできないわけで,ここに,純粋科学研究と教科教育研究の交流が必要である理由がある。こうした点から,イ国の理科教育の今後の発展のためには,純粋科学と教科教育学の両者を少しでも理解できる人材を増やしてゆくことが必要だと思われる。なかなか困難なことには違いないが,常時,純粋科学と教科教育を並行的に研究したり,あるいは,ある時(数年間)は純粋科学を,ある時は教科教育を研究したりする幅の広い人材が求められる。

表 Ⅱ-3   理数教育学部所属教員の教育水準

教員の留学(1997)については表Ⅱ-4 に示されている。この表もまた,教官のイ国・日本における研修計画策定の参考となる。

表 Ⅱ-4   教員の留学

マラン教育大学理数教育学部の留学者の百分率は,日本の教員養成大学に比較して,はるかに多く,恵まれているように見受けられる。これは一人当たりの授業負担が,日本の教員養成大学に比較して少ないことによるのではないかと思われる。しかし,このことは,自国内での人材養成が不可能な場合には当然正しい方略といえよう。留学は,S2, S3 の両方に対して行われている。S3 は純粋科学のみになっている。S2 も純粋科学が教科教育より多い(専攻別人数を配慮か)。当面は,S1 のみを修了した教官のレベルアップをはかることと,純粋科学,教科教育学両分野において,博士学位取得者を増やすことが特に重要と思われる。

本プロジェクトの受け皿の機関としてのグロース・センターは既に設置されている。グロース・センター長は,生物学専攻の学術博士号取得者であるが,理科教育に対する造詣も非常に深い。知識重視から科学的プロセス重視への転換を試みようと意欲的である。

マラン教育大学には修士課程と博士課程が設置されている。特に生物教室はレベルが高く,隣接するブラブイジャヤ(BRAWIJAYA)大学と博士課程において協力関係を保っている。

マラン教育大学は,政府の方針で,将来,一般大学への移行を考えているが,その場合でも,数理教育部門は残る見込みである。一般大学への移行は,施設や人材がある程度充実し,国際的な基準が達成された後のことであり,また教師養成もかなり充実した後のことと考えられ,10 年以上の年月を要すると思われる(実際は数年後に実施された。「表Ⅰ-2 プロジェクト年表」参照)。ちなみに,マラン教育大学は,隣接するブラブイジャヤ大学から,教師養成を目的として分離されて設置されたものである。マラン教育大学理数教育学部では,現在,数学,物理学,化学,生物学の4つの学科が設置されているが,将来,地理学科(地学科ではない)と情報教育学科を増設して6学科構成にしたいという意向をもっている。また,理数教育学部およびグロース・センターでは,環境教育についても,今後充実してゆきたいという希望をもっている。情報教育や環境教育は,国際的にも,今後ますます重要になると思われるので,これは,正しい方向であろう。

9-2-1-1-2 カリキュラム   

a)教師養成カリキュラムの構造

教師養成(学部)カリキュラムは,一般的に,一般教養,教育学,教科専門,教科教育, 教育実習などの授業科目から構成される。教育学には,教育原理などの理論的・基礎的な授業科目のほかに,実践にかかわる,たとえば「コミュニケーション・スキル」や「カウンセリング」などの授業科目が含まれるのが望ましい。日本では,教育職員免許法の規定を遵守しながら,各教員養成大学で独自の理念にしたがって,それぞれ独自のカリキュラムを構成している。例えば,東学大では,現在,小学校教員養成課程においても, ピーク制という,各教科をかなり深く学ばせる体制をとっている。また,そうでない体制をとっている大学学部もある。どちらのカリキュラムもいろいろ問題点をもっている。イ国の教師養成カリキュラムの構成原理については,今後の調査・研究に待ちたい。

バンドン教育大学における,学部卒の必要単位数は,150 単位であり,多少詰め込み教育の感がある。マラン教育大学についても同様である。現職教育カリキュラムの内容についても,今後の調査・研究に待ちたい。

教師教育(学部)および現職教育カリキュラムに関連して,日本の「教育職員免許法」に相当するものの存在と,その内容,特に免許取得に必要な大学の授業科目指定についても調査を要する。そうした科目における内容の充実をはかる必要がある。

b)教員養成課程カリキュラムの内容

マラン教育大学理数学部の中学校教員養成 S1 課程カリキュラムは,物理学科,化学学科,生物学科で共通部分を除き多少異なるが,計 150 単位からなる。共通部分は,一般

教養科目 16 単位,基礎教職科目 13 単位,教科教育法科目 21 単位からなっている。学科に

よって異なる部分は,物理学科では必修研究科目が 94 単位,選択研究科目が 6 単位であり,

化学学科では,必修研究科目が 98 単位,選択研究科目が 2 単位,生物学科では,必修研究

科目 98 単位,選択研究科目 2 単位となっている。どの学科も,選択研究科目の少なさが目立つ。

教師養成上,基礎科学と教科教育科目のバランスが問題であるが,イ国の中学校教員養成 S1 課程カリキュラムの場合には,教科教育の科目がかなり存在し,これはよい面と評価される。

マラン教育大学は教育学部,言語芸術教育学部,理数教育学部,社会科学教育学部,科学技術教育学部からなっている。この内,初等教育は,教育学部が責任を負っている。科学教育の進展のためには,小学校から科学的態度や科学的スキルを継続的に学習してゆくことが重要と思われる。したがって,初等教育段階における科学教育も今後,重視してゆく必要がある。

c)言語

初等・中等・高等教育の全ての段階の理数教育は,筆者の視察した限りでは,インドネシア語で行われている。かって英国が宗主国であった東南アジアの国家における理科教育は,後期中等段階より英語と母国語で行われている場合がある。これは,人材養成上,有為な人物の旧宗主国への留学を容易にさせたり,教科書を含む教材開発に手間がかからな

い,経済のグローバル化に対応できるなどの利点がある反面,一般市民の教育においては,母国語を用いる初等・前期中等(小・中学校)段階における教育から,英語と母国語による後期中等(高等学校)・高等教育の切り替えによって,学習が困難になるなどの問題を抱えている。その国の教育の発展は,母国語を用いなければ達成されないという意見もある。この点は,イ国では,アルファベットを文字として使う公用語を用いているため,教育の自立的発展が期待される。

教育大学においても,基本的にはインドネシア語で教育が行われている。バンドン教育大学では,イスラム教の休日であったため,授業は視察できなかったが,マラン教育大学では,物理実験や生物学の授業を視察した。そこでは,インドネシア語の実験手引き書を用いていたし,また生物学の授業はインドネシア語で行われていた。ただし,他の言語の使用も認められている。

9-2-1-1-3 現職教員及び教育大学学生の資質

本プロジェクト案件の受け入れ校である3教育大学の学生は,いずれも優秀であると評価されているもようである。

9-2-1-1-4 教育施設

視察した2教員大学(バンドン教育大学,マラン教育大学)は,イ国では代表的で最もレベルの高い教育大学とされているが,理数教育学部の規模の大きさに見合う設備や機材がない。マラン教育大学では,基礎物理学実験の授業を参観できたが,5,6人で一つの実験装置,器具を使っており,これは日本の3倍の規模である。

バンドン教育大学の理数教育学部では,数学教育,物理教育,化学教育,生物教育の各学科の建物はかなり老朽化しており,また学科の規模に見合う適切な広さが確保されていない印象を受けた。

マラン教育大学の理数教育学部では,数学教育,物理教育,化学教育,生物教育の各学科の建物は既に完成しており(7つの建物,計 15,200 平方m),その内で授業も行われている。しかし,これらの建物をつなぐ回廊の建設を要求している。さらに,視聴覚教室内の視聴覚設備も要求している。新しい教育・研究用機材はほとんどない。

9-2-1-1-5 機 材

バンドン教育大学,マラン教育大学とも,小・中学校・高等学校までの理科授業で使うレベルの器具は多少ある。しかし両教育大学とも,理科教育において,教師養成上,最も基本となる基礎的な理科実験のための機材は,ほとんど無いか,圧倒的に不足している。両教育大学は,この機材の供与について,日本側に強く期待している。この件に関する教官の期待と熱意は,非常に高い。

要求されている機材は,要求書にリスト・アップされているが,小・中・高等学校の生徒実験用機材,大学生の学生実験用機材,研究用教材の3種に大別されると考えられる。また教育大学共通の機材と,各教育大学独自の機材がある。さらに,現有機材の補足部品も若干含まれているようである。

マラン教育大学では,視聴覚室は新設の建物内にあるが,視聴覚設備は一切入っていない。コンピュータについては,メインフレームコンピュータは無い。パソコンは,完全に時代遅れの 8 ビット機が 20 台程度入っている。32 ビット機と思われるパソコンは数台と思われる。コンピュータについては,バンドン教育大学も同じ状況にある。

マラン教育大学の理科関係の物的な要望は次のようなものである。以下において,1件あたり1台ないしは複数台である。

a)物理

・物理学共用器具    110 件

・物理学非共用器具    173 件

b)化学

・基礎化学共用器具(物理・化学・生物・数学・その他の学生用)  69 件基礎化学の実験に用いる。

・初等・中等学校の実験室用および研究用化学器具  153 件

物理化学,有機化学,無機化学,生物化学の実験に用いる。

・初等・中等学校,教師教育,物理・化学・生物・数学科の学生のための実験室用および研究用化学機器      6 件

原子吸収スペクトロメーター  1式

フーリエ変換赤外スペクトロメーター  1式気体クロマトグラフィー 1式

高性能液体クロマトグラフィー  1式薄層クロマトグラフィー      1式

紫外可視スペクトロメーター  1式

c)生物

・一般生物学用器具  36 件

・生物学共用機器

スペクトロメーター他  4件

・生物学用器具・機器  86 件

d)環境科学実験研究用器材          64 件

e)理数学部棟改善,施設,他の設備

・回廊建設(多目的棟と物理学棟間他)  6 件

・生物実験用施設(温室他)  9 件

・化学実験室用家具および改築 24 件

・物理学実験室用家具  8 件

・視聴覚室共用器材  16 件

・LAN 他

LAN  31 件,  視聴覚教育室  13 件

・SMU(the Sekolah Menengah Umum)器材  35 件

イ国教官の日本派遣や日本人専門家のイ国派遣についても,これらの要望から考えてゆく必要がある。教育工学的分野では,LAN,インターネット,視聴覚設備の立ち上げと活用や授業研究,理科実験分野では,専門的機器の活用指導などに配慮しなければならない。要望書では,米国製の器材が多いことに注意がいる。

9-2-1-1-6  教 材

大学生用教材については,今後の調査・研究に待ちたい。特に初等・中等の理科教科書について述べると,かなりの種類の教科書が書店で購入できる。使用言語はインドネシア語である。内容は,日本に比べてかなり高度な話もでている。これは知識重視でプロセス軽視の傾向を示している。今後,スキル,科学的思考育成を重視すべきである。

9-2-1—1-7 外国援助の実績

無し(マラン教育大学)

9-2-2.プロジェクトの要請内容の確認

9-2-2-1     プロジェクトの要請内容-理科教育-

9-2-2-1-1 プロジェクトの目的・成果・活動内容の大枠確認

拡充強化の目標としては,バンドン教育大学数理教育学部(FPMIPA)の場合,スタッフ の強化と発展を願って,次の2点をあげている。

1)イ国における小・中学校の算数・数学および理科教師の資質向上

2)算数・数学および理科教師の研修教育の開発と改善について,他の教育大学(IKIPs)あるいは教員教育研究所(LPTKs) を支援すること。

要請内容は,現職教育の方法や,教師養成カリキュラム改善など教育的側面の強い,いわばソフトウェア的なものと,理数科棟建設(バンドン教育大学),回廊および温室などの施設建設(マラン教育大学),実験機材供与などいわばハードウェア的なもの,専門家のイ国派遣とイ国側教官の日本における研修などスタッフ・デベロプメントの3種に分類できる。すなわち,イ国の理数教育向上のあらゆる面への協力を要請されている。

プロジェクトの受け入れは,教育大学内に設置されているグロース・センター(Growth Center)が中心となって行う。このセンターは,次の点を目的としている。

(a)理数系教師養成のモデルとして発展すること。

(b)連続的かつ独立的に発展すること。

(c)他の LPTK の発展に協力すること。

グロース・センターは,全国5カ所の教育大学内の FPMIPA に置かれている。本案件の場合,この内,援助受け入れ能力が最も高いとみなされている,バンドン教育大学,ジョグジャカルタ教育大学,マラン教育大学内の各グロース・センターが受け入れ機関となる。

グロース・センターの業務内容は,次の通りである。

a)D2 と現職教育支援

b)継続教育(continuing education)

継続教育は,現職教育 (in-service education)に含まれると考えられるが,中学校で2 年間教職を経験した者を D3 レベルへ昇格させるものである。

c)より効果的な教授・学習プログラムのモデル開発d)より理数教育に関連した研究を実施する。

教授・学習過程など教育学的内容を重視する。e)図書館の充実

インターネットを利用する他大学とのオンライン・サービス。特にバンドン教育大学は情報センターとカリキュラム開発センターの役割を担うことになっている。

グロース・センターの活動内容は,次の通りである。

  • 実験技能の改善
  • LPTK スタッフの短期研修
  • 小・中学校教師の,算数・数学および理科におけるパートタイムの現職者研修
  • LPTK のカリキュラム改善と評価
  • 教授法,教材研究
  • セミナーおよびワークショップの開催(7)機材解放

プロジェクトの発展は,以下の4点から構成したいとしている。

a.専門家派遣

a.1   専門家の業務

  • 教材修得能力を改善するために,先進的知識を大学教員に移転すること
  • 短期研修プログラムの開発支援
  • カリキュラムのモニタリングと評価を通して,カリキュラム開発に対する体験の共有と助言を与えること
  • 算数・数学および理科教師に対するセミナーとワークショップの開催

a.2 専門家の分野

数学,物理・化学・生物・地学

コーディネイター

(注:今回の事前調査団合意書には,「数学教育学」「理科教育学」の専門家は「数学」や「物理・化学・生物・地学」の専門家に含まれるものと考えられ,それらは明記されていないが,本プロジェクトの目的に照らして,今後,これを明記することを検討されたい。)

イ国側は,専門家数として,6人×60ヶ月=360人月を要請している。

b.大学教員の資質向上

b.1    海外研修

b.2   実験室要員に対する国内研修

c.機材の供与

d.教育プログラムおよび教材の開発

9-2-2-1-2  要請されているプロジェクトの内容(マラン教育大学)

マラン教育大学グロース・センターが要請しているプロジェクトの内容は,A)課題,B)活動,C)計画について述べられている。それらのそれぞれについて,カリキュラム開発とカリキュラム改革,現職教育カリキュラム内容と教材の開発,学校間の連携,人的交流の5点の面から述べられている。そこから,要請のある程度詳しい内容がわかる。バンドン教育大学やジョグジャカルタ教育大学の場合も,ほとんど同様と考えられる。それらは次のようなものである。ここで,カリキュラム改革やその内容と教材の開発は,教育大学理数教育学部の教師養成に係わるカリキュラムについてのものを含んでいる。

A)課題

課題Ⅰ.カリキュラム開発とカリキュラム改革

a.マラン教育大学理数教育学部(学科)の教師教育の必要を応えるように再構成する必要がある。

b.小・中学校のカリキュラム開発に,同理数教育学部(学科)の参加が少ないこと。

課題Ⅱ.現職教育

a.数学教材や理科教材に習熟した小・中学校教師が少ないこと。

b.プロセス・スキルや問題解決スキル・アプローチによって,教授と学習過程を導くことに習熟した小・中学校教師が,依然として不足していること。

c.学校図書館や教授支援の利用が,最大限でないこと。   d.算数・数学と理科の実験を開発する教師の能力が低いこと。

e.学校教師の教本,モジュール,生徒用ワークシート作成能力の欠如f.学校教師の教育ソフトウェア作成能力の欠如

g.学校教師の研究遂行能力や科学報告作成能力の欠如

h.小・中学校教師は,いまだに,算数・数学カリキュラムと理科カリキュラムの理解に欠けていること。

i.小・中学校教師は,いまだに,算数・数学および理科指導のために適切な学習理論の習得に欠けていること。

j.小・中学校教師は,いまだに,ある教材の習得に欠けていること。

k.小・中学校における実験を保持する人的資源および予算が欠如していること。 l.学校教師は,各各のトピックや学校環境に適切な教授モデルを開発する技能と能力

に欠如していること。

m.小・中学校教師は,職場外で知識を増大させる機会にめぐまれていないこと。

課題Ⅲ.カリキュラム内容と教材の開発

a.LPTK の内容と,小・中学校カリキュラムに整合性がみられない。

b.小・中学校の児童・生徒は,算数・数学や理科の教材についての習得が低い。c.良質で標準的な教本が不足している。

d.算数・数学や理科の教育ソフトウェアの活用が十分でない。

課題Ⅳ.学校間の連携

a.教師間のコミュニケーション・フォーラムが,いまだ十分ではないこと。

b.教師間のコミュニケーションをはかる,雑誌,セミナー,ワークショップなどの馬体が不足していること。

c.小・中学校教師のための専門的な組織がないこと。

d.算数・数学と理科指導の相談に応ずる公的機関がないこと。

e.算数・数学と理科指導について,共同研究をおこなう公的機関がないこと。

課題Ⅴ.人的交流

a.算数・数学と理科指導の改善の重要性について理解している小・中学校教師が少ないこと。

b.算数・数学と理科指導および教育経営の改善の重要性について理解している講師が少ないこと。

c.実験補助員の,実験活動を遂行する能力が低いこと。d.技官の,実験器具の維持・補修能力が低いこと。

e.講師の,良質の研究を開発し,また科学報告を著す能力が低いこと。

 

B)活動内容

活動Ⅰ. カリキュラム開発とカリキュラム改革

a.小・中学校および FPMIPA (LPTK)カリキュラムの再検討

b.LPTK および大学のための,小・中学校,FPMIPA および環境教育 (EE)カリキュラムの最低基準の同定

c.FPMIPA および環境教育カリキュラムの標準モデルの設計d.FPMIPA および環境教育カリキュラムの構造の開発

e.LPTK および大学のための,FPMIPA および環境教育カリキュラムの概略の開発

f.モデル・カリキュラムに基づいた学習活動の開発

g.カリキュラムの試行

h.モデル・カリキュラムの再検討i.カリキュラムの勧告と社会化

活動Ⅱ.現職教育

a.教師の数学・科学概念の修得増進

b.学習過程,特にプロセス・スキルや問題解決アプローチの修得増進c.教師の実験器具活用能力および実験設計能力の増進

d.指導書,モジュール,生徒用ワークシートなどの教材に対する教師の準備能力の増進

e.教師の教育ソフトウェアの設計能力の増進

f.教授学習過程について行動的な研究に教師を関与させること。g.教師の算数・数学および理科カリキュラムの修得増進の支援

h.教師の算数・数学および理科指導のために適切な学習理論の修得増進に対する支援i.教師の算数・数学および理科の実験の維持に対する支援

j.算数・数学および理科実験室の機能の最大化に対する教師支援

k.生徒環境に基づいた各トピックに適切な学習モデルの開発技能の増進に対する教師支援

活動Ⅲ.カリキュラム内容と教材の開発

a.学校および LPTK カリキュラムの内容の整合性を高めること。

b.生徒の行動的な学習過程を指向した,モジュール活用学習モデルの開発c.標準化された指導書やモジュールの開発

d.(生徒の環境に関連した)実験の開発e.教育ソフトウェアの開発

活動Ⅳ.学校間の連携

a.教師交流フォーラムとしてのMGMPの役割と機能の最大化

b.小・中学校における算数・数学および理科指導についての,論文および研究報告を含む学術雑誌の発行

c.分野別教師連合の設立

d.算数・数学および理科指導ならびに青少年科学グループ(KIR)についての相談事務局の設立

e.算数・数学および理科指導についての交流メディアとしてのセミナーおよびワークショップの組織化

f.学校と LPTK 間における,算数・数学および理科指導に関する協同研究の事務局の設置

g.(革新的カリキュラム,指導,教授学習アプローチを実践する)モデル学校についてのパイロット計画の開発

h.他教員大学の FPMIPA に対して,プログラム実施能力の増進支援および算数・数学および理科教師養成支援

i.教材開発に同調できるように,他の LPTK および大学との協同ネットワークを構築すること。

活動Ⅴ.人的交流

a.比較研究の推進

1)教員研修センター

2)小・中学校

3)大学の実験室

4)小・中学校の実験室

b.研修およびインターンシップ・プログラムの準備

1)小・中学校用の効果的な教材の設計法

2)LPTK 用の効果的な教材の設計法

3)小・中学校における実験活動の実施

4)サンプル的な実験器具や実験の設計法

5)大学における各教材に対する実験活動の実施

6)一般的な実験器具の操作法

7)特別な実験器具の操作法8.特別な分野における研究

c.セミナーおよびワークショップの開催

1)小・中学校(高校を含むか)のための効果的な教材の設計法

2)LPTK のための効果的な教材の設計法

3)小・中学校の学校環境に基づいた指導法

4)小・中学校における実験活動の導入法

5)簡単な実験器具や実験の設計法

6)注目すべき特殊な実験器具の操作法

7)算数・数学および理科における注目分野,特に新しい発見

8)数学および科学における注目すべき領域の研究

9)LPTK における数学および科学における注目すべき領域の教材開発

d.発展研究

1)実験器具の修理・設計に対する教師の能力を増進する目的をもつ学位プログラムの開発

2)純粋数学および純粋科学における S2(修士課程)あるいは S3(博士課程)プログラムに責任をもつ講師数

の増加

3)環境研究における S2(修士課程)あるいは S3(博士課程)プログラムに責任をもつ講師数の増加

 

C)全体計画

プロジェクトの要請内容(マラン教育大学)の一部

計画Ⅰ.カリキュラム開発

A.教師養成カリキュラムの開発

1)必須な資質の同定(知識・態度・技能)

2)ワークショップおよび全国セミナーを通してのカリキュラム開発

3)開発したカリキュラムあるいは教材の集中的試行

4)開発したカリキュラムの改善

5)勧告の改善

B.学校カリキュラムの開発

1.必須な資質の同定(知識・態度・技能)

2.ワークショップおよびセミナーを通してのカリキュラム開発3.開発したカリキュラムあるいは教材の

集中的試行

4.開発したカリキュラムの改善

5.勧告の改善

計画Ⅱ.現職教育

1)S1 プログラム(学士課程)以上の研修カリキュラムに基づく,現職教育活動の必要性の事前評価の実施

2)同上カリキュラム開発

3)研修カリキュラムの試行

4)研修カリキュラムの改善

5)研修カリキュラムの試行結果に基づく研修用教材の開発

6)数理教材の向上,SD,SMP,SMU における活用および研修後の相談の実施

7)若年層教官に対する,実験設計を含む実験技術の向上

計画Ⅲ.教材開発

1)SD,SMP,SMU,LPTK/FPMIPA において開発する教材の事前評価

2)FPMIPA 用教材の開発

3)SD,SMP,SMU のための教材および教育用メディアの開発

4)開発された教材の FPMIPA における試行

5)開発された教材の SD,SMP,SMU における試行

6)開発された教材の改善

7)全学科における毎学期の蝉セミナーの開催

計画Ⅳ.学校間の連携

1)FPMIPA と学校間の交流プログラムを支援する資源の同定

2)マラン教育大学理数教育学部と他のグロース・センターの協同プログラムの開発

3)指導法改善の普遍化を目的にする,FPMIPA と学校間協同プログラムの開発

4)インターネット接続および LAN 設置

5)国家的な科学教育教師連合(Mathematics and Science Teacher Association) の形成

6)生物・化学・数学学科発行の雑誌の質的向上および物理・環境学科の雑誌の発行

7)SD,SMP,SMU のための算数・数学および理科の紀要の発行,セミナーとワークショップの開催

計画V.人的交流

1)人的交流の準備

a.学校ならびに LPTK,教師,講師の人的交流プログラム参加条件の調査

b.参加者基準の事前評価

c.日本語コース

2)SMU教師と講師による日本における比較研究

3)実習プログラムの作成

4)学術スタッフの研究推進のための日本派遣

5)日本からの講師あるいは専門家の派遣

次に,これら5点の課題について筆者の意見を簡単に述べる。

課題Ⅰ)カリキュラム開発とカリキュラム改革について

マラン教育大学理数教育学部では,同学部を教師教育の必要性に対応できるように再編成することと,同学部が小・中学校のカリキュラム開発に参加することが少ないことを改善したいと考えている。

そのため,教師養成カリキュラムおよび学校カリキュラムの開発をめざして,教師の必須な資質の同定(知識・態度・技能),ワークショップおよび全国セミナーを通してのカリキュラム開発,開発したカリキュラムあるいは教材の集中的試行と改善,勧告等を研究目的として,種種の活動を予定している。それらは,小・中学校および FPMIPA (LPTK) カリキュラムの再検討,LPTK および大学のための,小・中学校,FPMIPA  および環境教育 (EE)カリキュラムの最低基準の同定,FPMIPA および環境教育カリキュラムについて, 標準モデルの設計,構造の研究,カリキュラムの概要の開発,モデル・カリキュラムに基づいた学習活動の開発,カリキュラムの試行,再検討,勧告と社会化である。

課題Ⅱ)現職教育について

現職教育については,まず,小・中学校教師が,算数・数学カリキュラムと理科カリキュラムの理解,算数・数学および理科指導のために適切な学習理論の習得,ある教材の習得に欠けていることをあげている。これは,教科の本質に係わる問題である。これは,算数・数学教育や理科教育が成果をあげていないためと考えられる。日本でもかって,教科教育学の専門家が育っていない数十年前では,大学におけるこれらの授業時間では,純粋科学の話で代用されたこともあるといういきさつがある。

次に,小・中学校教師が,数学教材や理科教材に対して習熟度が低いこと,実験や教材の開発・作成能力が欠如していること,実験器具活用能力が低いこと,スキルを重視した学習指導法ができないことなどが問題になっている。これは,教師の指導能力の向上という問題である。この問題には,教師の数学・科学概念の修得増進が含まれていることに注意が必要である。ここで,教材には,指導書,教本,モジュール,生徒用ワークシート, 教育ソフトウェアなどが含まれる。昨今は,知識を与えることよりも,探求の過程を構成しているプロセス・スキルや問題解決スキルを重視するようになっているため,この問題意識は正しいものと受け止められる。教師の指導能力の増進に当たって,教授学習過程について行動的な研究に教師を関与させること,ならびに教師の算数・数学および理科指導のために適切な学習理論の修得増進に対する支援を行うことを希望している。

さらに,学校教師の研究遂行能力や科学報告作成能力の欠如や,トピックや学校環境に適切な教授モデルを開発する技能と能力という,研究能力やシラバス(教授項目)構成能力のような高度な能力の欠如を問題にしている。日本では,一部の教師は,こうした能力を持っていると考えられる。また,学校図書館や教授支援の利用の少なさ,小・中学校における実験を保持する人的資源および予算の欠如,小・中学校教師の職場外研修の機会の少なさなど,教師の支援体制を問題にしているが,これは,日本でも理想的な状態にあるわけではない。

課題Ⅲ)カリキュラム内容と教材の開発について

この課題は,LPTK の内容と,小・中学校カリキュラムに整合性がみられないこと,小

・中学校の児童・生徒は,算数・数学や理科の教材についての習得が低いこと,良質で標準的な教本が不足していること,算数・数学や理科の教育ソフトウェアの活用が十分でないことがその内容である。

特に,生徒の行動的な学習過程を指向した,モジュールを活用する学習モデルの開発, 標準化された指導書やモジュールの開発,(生徒の環境に関連した)実験の開発,教育ソフトウェアの開発が問題になっている。これらの開発を本案件で協力したとしても,その成果が直ちにイ国のカリキュラム内容に反映するものではなく,むしろ教員の開発能力を育成するものと捉えるべきであろう。特に教師養成段階(大学)において,これらの能力開発を

これらの  開発を本案件で協力したとしても,開発成果がすぐイ国のカリキュラム内容に反映するものではなく,むしろ教員の開発能力を育成するものと捉えるべきである。特に教師養成段階(大学)において,これらの能力開発を行おうとするものである。

課題Ⅳ)学校間の連携について

この課題では,教師間のコミュニケーションが十分ではないこと,教師間のコミュニケーションをはかる,雑誌,セミナー,ワークショップなどの媒体の不足,小・中学校教師のための専門的な組織の欠如,算数・数学と理科指導の相談に応じたり,共同研究をおこなう公的機関がないことなどが問題視されている。

これを改善するため,教師交流フォーラム,小・中学校における算数・数学および理科指導についての論文・研究報告を掲載する学術雑誌の発行,分野別教師連合の設立,算数

・数学および理科指導ならびに青少年科学グループ(KIR)についての相談事務局の設立や, セミナーおよびワークショップの組織化,学校と LPTK 間における,算数・数学および理科指導に関する協同研究の事務局の設置,革新的カリキュラム,指導,教授学習アプローチを実践するモデル学校についてのパイロット計画の開発,他教員大学との教師養成支援や大学間教材開発協同ネットワークの構築が考えられている。これらは,かなり広範な活動であり,学校外教育の部分も含まれている。日本でも,最近,科学離れを防ぐために, この種の活動が博物館や地方自治体などでも活発になってきている。イ国では,これを支援するため,FPMIPA と学校間の交流プログラムを支援する資源の同定,マラン教育大学理数教育学部と他のグロース・センターの協同プログラムの開発,指導法改善の普遍化を目的にする,FPMIPA と学校間協同プログラムの開発,インターネット接続およびLAN設置,国家的な科学教育教師連合(Mathematics and Science Teacher Association) の形成,生物・化学・数学学科発行の雑誌の質的向上および物理・環境学科の雑誌の発行, 学校教師向け算数・数学および理科の紀要の発行,セミナーとワークショップの開催などが考えられている。

課題Ⅴ)人的交流について

人的交流に関する課題は3点にまとめられる。まず,算数・数学と理科指導の改善の重要性について理解している小・中学校教師が少ないばかりでなく,算数・数学と理科指導および教育経営の改善の重要性について理解している講師も少ないことであり,これは教科教育学的な側面である。次に,実験補助員や技官の,実験活動を遂行する能力や,実験器具の維持・補修能力が低いことがあげられているが,これは科学実験の基礎的能力で, 純粋科学に関与している。さらに,講師が良質の研究を開発し,また科学報告を著す能力が低いことがあげられているが,これは講師陣の研究能力を問題にしている。

こうした課題に対処するため,教員研修センター,小・中学校,大学の実験室,小・中学校の実験室が,日本とイ国でいかなる差異があるか比較研究を推進すること,研修およびインターンシップ・プログラムの準備,セミナーおよびワークショップの開催が考えられている。

研修およびインターンシップ・プログラムは,小・中学校・LPTK 用の効果的な教材の設計法や小・中学校における実験活動の実施,サンプル的な実験器具や実験の設計法,大学における各教材に対する実験活動の実施,一般的な実験器具の操作法,特別な実験器具の操作法,特別な分野における研究がある。

セミナーおよびワークショップは,小・中学校(高校を含むか),LPTK のための効果的な教材の設計法,小・中学校の学校環境に基づいた指導法,小・中学校における実験活動の導入法,簡単な実験器具や実験の設計法,注目すべき特殊な実験器具の操作法,算数

・数学および理科における注目分野,特に新しい発見,数学および科学における注目すべき領域の研究,LPTK における数学および科学における注目すべき領域の教材開発について開催を希望している。

また,スタッフ・デベロプメントとして,実験器具の修理・設計に対する教師の能力を増進する目的をもつ学位プログラムの開発,純粋数学および純粋科学における S2(修士課程)あるいは S3(博士課程)プログラムに責任をもつ講師数の増加,環境研究におけるS2(修士課程)あるいは S3(博士課程)プログラムに責任をもつ講師数の増加を要請している。

人的交流の準備として,学校ならびに LPTK,教師,講師の人的交流プログラム参加条件の調査,参加者基準の事前評価,日本語コースの設置や参加が考えられており,また, 日本における比較研究,実習プログラムの作成,学術スタッフの研究推進のための日本派遣,日本からの講師あるいは専門家の派遣を要請している。

以上みてきたように,本案件に対し,イ国側は,科学教育全てに係わるきわめて包括的な内容の要請を打ち出してきている。

9-2-2-1-3 要望機材の確認

要望器材には,研究用のかなり高度な機器も含まれている。それらが適切であるか否かについては,物理学・化学・生物学などの各専門家に検討してもらう必要がある。

9-3.プロジェクト協力の基本計画

9-3-1  協力範囲及び内容-理科教育-

9-3-1-1 基本的な戦略について

本案件は,イ国において 100校ある教育大学の中で,それぞれジャワ島西部,中部および東部にある中心的な教育大学であるバンドン教育大学,ジョグジャカルタ教育大学およびマラン教育大学を中心として,同国の理数科教育の全体的向上をはかるものであり,価値とレベルの高い協力案件と考えられる。イ国側は,本案件の一刻も早い立ち上げを希望しており,また本案件に非常に強い期待を抱いている。

本案件では,イ国の理数教育の改善として,教育大学の学部教育(pre-service)の充実は合理的と判断される。その理由は,資質が高めれていない学部卒業者が次から次に生み出される状況では,現職教育(in-service)のみを充実しても,教師の資質向上は効果的でないし, また現職教育に過大な負担がかかるためである。しかし,このことは,現職教育の重要性を評価しないことではない。特に科学技術教育に関しては,教育内容は,しばしば改訂しないとたちまち古くなる。また,イ国では教員免許基準の引き上げ,無資格教員のレベルアップなどの課題を抱えており,教員の再研修が必要になっている。ここに現職教育の意義があり,それは当然必要なものである。日本でも,規模ははるかに小さく,また実状も異なるが,一部同様な課題がある。例えば,都道府県では,二種教員免許を所持する教員を対象に一種教員免許が取得できるよう研修を実施するなど努力している。ただ,日本の現職教育は,大学,都道府県の教育センター,都道府県の夏期研修,学校(初任者研修) などで行われているが,日本の大学における現職教育は,主として修士課程で行われている。イ国でも,大学以外の種種の教員研修機関があるが,それらへは他の国際機関の支援が得えられるため,本案件における現職教育支援は,主として教育大学の理数教育学部やグロース・センターが対象となる。

本案件は,プロジェクトの要請内容から明らかなように,かなり総合的であり,したがって,日本側も,総力をあげて取り組む必要がある。要請は,施設・設備,機材供与,専門家派遣からなる。要請内容は,教育から研究まで,また初等教育から大学スタッフの研究指導までと総合的であり,したがって,理科教育,純粋科学に係わるあらゆる領域の専門家が必要と考えられる。このため,本案件の実施に当っては,専門家を日本全国より総動員する態勢で臨む必要があろう。専門家としては,大学の研究者を中心に,国立研究機関の研究者が妥当と思われるが,現職教育に直接関与する業務の指導に対しては,教育センター職員なども考えられる。

科学教育は初等教育段階においても重要であるが,要請書からみる限り,機材は主に理数教育学部やグロース・センターに供与することになっていると考えられる。初等教育段階へは,間接的な波及効果が期待される。

筆者の印象では,イ国側の要請を5年間で全て完遂することは無理と思われる。問題は, 少ない日本側専門家で,イ国の包括的な要望に応えるために,いかにイ国側の人物(カウンターパート)を組織化するかである。また,政府関係者は,協力を約束しているが,イ国側も,国内旅費,学校間協力などで,相当な援助資金が必要と思われる。

数学教育学・理科教育学は,基礎科学と教育実践をつなぐ科学として存在している。イ国における数理教育のレベルの向上は,基礎科学と数学教育学・理科教育学のバランスのよい発展が必要である。数学・理科教育の発展といえども,基礎科学の充実が求められるが,ただし,援助が基礎科学のみの発展に帰さないように注意する必要がある。科学基礎研究と数学教育研究・理科教育研究が並行的に発展するようにしてゆくことを,基本的な戦略として位置づけるべきであろう。

私案であるが,イ国の理科教育の発展は,次のような段階を踏むと考えられる。

a)第1段階:実態把握と発展の方向性の具体化

・理科の教師教育ならびに現職教育に関する実態の把握(調査)

学校現場の実地把握

・教師養成カリキュラムの検討

教師養成カリキュラムのイ日比較研究

・施設・設備・機材の調査

・理科教育のカリキュラム構造

イ国スタッフの日本研修(理科教育)

環境教育-(東学大の環境科学コースのカリキュラム参照)

・理科教育学研究の実態調査

・工作室

b)第2段階:支援による発展期

b-1.施設・設備・機材・器具の整備・拡充

建物,温室,実験設備・器具,工作室

b-2.ソフトウェア的部分の発展

・学生実験の充実と高度化-イ国スタッフ

・理科教育学研究の進展-日本研修

・日本における研修項目

教師養成カリキュラム,教科書,教材,現職教育,理科教育学研究,実験法,科学研究

c)第3段階:科学教育の自立的発展

・学会の発足と紀要・学術雑誌の発行

・理科教育学の自立的発展

・教師養成の自立的発展

これらの第二段階からではなく,第一段階から,本案件に加えることが望ましい。

9-3-1-2 理科教育,実験指導,授業研究

理科教育分野におけるイ国への協力は,理科教育,実験指導,授業研究の3つを柱とす

る。これらの内,最も重要なものは,実験指導である。実験指導も,教育大学の教師養成カリキュラムの形態にもよるが,一般的につぎのようなもの(授業科目)が考えられる。

a)小学校理科教材研究(小学校教師を志望する全学生,現職教師対象,学校教材)

b)理科教材の基礎(小学校教師を志望する理科専修生,現職教師対象,教材作成に密着した基礎科学)

c)基礎科学実験(理科専科学生対象の基礎的実験)

d)専修理科実験(物理・化学・生物・地学各専修学生用のある程度発展的な基礎実験)

e)卒業研究としての専門的科学研究

これらの内,d),e)の実験は,バンドン教育大学およびマラン教育大学両校とも,あまり行われていない印象を受けた。また,c)に相当する物理学生基礎実験のマニュアル

(マラン教育大学)をみると,過度に応用的な内容の実験も含まれており,より適切な内容へ変更する必要性も感じた。今後,教師養成カリキュラムの改善と関与するが,これらの実験の実施状況や内容について検討を要する。

実験に用いる供与器材の使用法の習得については,日本での研修および日本人専門家の派遣が考えられる。特に,高度で特殊な機器に関しては,それに習熟している専門家を見い出してイ国に派遣すること,ないしはイ国教官に日本での研修を受けさせるようにする。

9-3-1-3  初等教育理科への対応,中等理科科目の選定

初等教育については,教育大学の教育学部が担当しており,理数教育学部は間接的な協力となっている。グロース・センターの活動のなかに初等理科への協力を含めるなど,初等理科教育の拡充のために今後工夫が必要に思われる。

中等(secondary)段階には,中学校と高等学校が含まれている。高等学校理科の科目は, 物理,化学,生物からなっているが,本案件の協力としては,必要に応じて地学的内容に

係わる支援も行うことが望ましい。また,将来を展望して,情報教育と環境教育を協力対象にすることが望ましい。

9-3-1-4  施設・設備

要望は,できるだけ満たすようにしたい。廃液処理など,将来に問題を残す可能性のあるものは,当初から協力するようにしたい。

9-3-1-5  機 材

機材の内,研究用機材は,かなり高度なものも要求している。日本での研修とセットにしなければ使いこなせないものもあると思われる。この点については,イ国の協力対象となっている教育大学教官の研究テーマを調査したり,過去の経験や論文リストを調査する必要がある。機材の使用希望者を確認する必要がある。いづれにしても,研究用機材については,物理・化学・生物・地学各領域の専門家に妥当性をチェックしてもらうのがよい と思われる。

9-3-1-6  専門家について

イ国へ派遣する専門家の業務としては,イ国側の要請を勘案すると,以下のような内容が考えられる。これらは,要請内容のソフトウェア的部分である。

a)カリキュラム開発教師養成,現職教育環境科学

環境教育の教師養成カリキュラム

b)理科実験指導

基礎実験指導(基礎,応用)

物理・化学・生物・地学(イ国には教科としての「地学」は無いが)の専門家は,各 分野における

観察・実験指導をおこなう。(いかなる内容にするか)

c)理科教育学研究

d)授業研究

教育工学,授業分析,視聴覚利用,コンピュータ活用(インターネット,LANの整備)

e)教材開発

教科書, 実験教材,補助教材(ワークシート),メディア教材(ビデオ,コンピュータ)

f)基礎科学の研究指導

物理・化学・生物・地学,環境科学,情報科学

g)教育行政

教育実習プログラム

h)学会運営

学会運営,雑誌編集・発行

9-3-1-7  理科教育学研究

理科教育の発展は,以下の研究が全体的に進歩してゆくようにすることによってもたらされる。これらの内,イ国では,どの領域の研究が,どの程度進捗しているか,より正確に把握する必要がある。

a) 基礎研究

科学教育論,科学論・科学哲学

b) 比較教育文化研究

c) カリキュラム研究

カリキュラム開発手法

カリキュラム開発

教師養成カリキュラム,学校カリキュラム

研修カリキュラム

アンケート,セミナー,試行,評価

d) 環境・STS教育研究

e) 情報教育・コンピュータ活用研究

f)教育システム・学習メディア研究

g)観察実験・教材研究

教材開発,教材構造

h) 認知科学・学習心理研究

学習理論

i) 授業実践研究

測定・評価法,創造性

理科教育学の専門家については,マラン教育大学では,理科教育学教室はないが,理科教育学専任のスタッフはいる。

9-3-1-8  将来的展望

教育・研究体制が整い,本格的な活動が開始されると,いろいろな薬品を用いることに

なる。廃液処理は,当初から指導するようにした方がよい。活動が活発化し,廃液の量が増えてくると,ある程度本格的な廃液処理施設の建設も必要になろう。さらに将来は,植物研究などで,放射能物質を利用することもでてくるであろう。また,研究用施設として, 液体窒素製造/貯蔵施設,放射線実験施設などが,研究用機器として,電子顕微鏡,研究用X線回折装置,プラズマ分光装置などが必要になってこよう。

9-3-1-9  目標達成の予想と評価法

本案件が実施された場合の成果をいかに評価すべきであろうか。評価は,論文数,発表数,学校間交流のレベル,研修会の数・内容・参加者数,教員基礎資格の向上など,多面的に評価することが重要である。日本の大学基準協会の評価法も参考になるかもしれない。いずれにしろ,評価は,教師養成カリキュラム開発などのソフトウェア面,物的なハードウェア面,教員大学スタッフの資質向上の3側面を総合的に評価する方法をとるべきで, 形式的なものに走りすぎないようにする必要がある。優秀な大学教官への支援は,時間はかかるが,必ず効果があると思われる。

9-3-1-10   今後の調査への要望

次回の実施調査においては,団員に,物理・化学・生物・地学の各分野の専門家を加えることが望ましい。

 

10. 長期調査団の派遣

1998(平成10)年3/1~3/14にわたり,長期調査団がイ国に派遣された(JICA 1998a)。本調査団の目的は,プロジェクト・マスタープランの検討と合意,日本側のPDM案とイ国側要望とのすり合わせ,協力活動項目・内容の検討であった。
団員構成は,団長・総括担当は下條隆嗣(東学大),教育行政担当の遠山紘司氏(文部省),理科教育担当の寺谷敞介氏(東学大),数学教育担当の橋本吉彦氏(横国大),協力企画担当の比嘉京治氏(JICA)であった。
ジャカルタ到着の3/1の夜,下澤隆専門家と打ち合わせ,3/2 JICAインドネシア事務所打ち合わせ後,日本大使館,BAPPENAS,教育文化省表敬,その後,高等教育総局との協議を行った。3/3~3/4の両日にわたり,高等教育総局および3IKIP代表者と協議を行った。3/5朝,高等教育総局および3IKIP代表者とミニッツ(覚書)案を協議後,ジョグジャカルタおよびマランへ移動した。日程が立て込んでいたので,団員をバンドンおよびジョグジャカルタのIKIP訪問グループとマランのIKIP訪問グループの2組に分けて,業務を遂行した。
3/9以降数日にわたり,3IKIP代表者と暫定実施計画(原案)を検討した。この長期調査において,かなりPDMを煮詰めることができた。基本的には,比嘉氏が用意したPDM案は了承された。最後の3/13は,高等教育総局と再協議,JICAインドネシア事務所へ報告して帰国した。詳細は割愛する。

11.実施協議調査(準備派遣)と実施協議調査団(R/D署名)の派遣

11-1.実施協議調査(準備派遣)
1998(平成10)年5/25~6/4,実施協議調査がイ国で行われた。この調査の目的は,次に控える実施協議調査団(R/D署名)の準備であった。この調査の資料はあまり残っていない。調査員は,確か下條(東学大)と比嘉京治氏(JICA)の二人であったと思う。
5/26は,ジャカルタJICAインドネシア事務所,日本大使館,BAPPENAS,教育文化省,高等教育総局を表敬訪問。翌5/27~5/20まで高等教育総局に3大学の代表数十名に集まって頂いて,PDMの内容を1項目ごとに徹底的に議論し煮詰めた。相互に不明確な点を議論して明確にしていった。5/30~5/31は休日のため資料整理,6/1は高等教育総局で協議,6/2は高等教育総局および教育文化省で協議,6/3日本大使館およびJICAインドネシア事務所に報告して帰国した。

11-2.実施協議調査団(R/D署名)
これまでのプロジェクト形成調査,基礎調査,事前調査,長期調査,実施協議調査を経て,プロジェクトの実施に向けてより具体的な姿が固まってきた。いよいよイ国側とこれまでの計画を再確認し,R/D署名を結ぶために実施協議調査団が派遣された。
同調査は,1998(平成10)年7/6~7/16に行われた。同団の構成は,河西明団長(JICA)のもと,教育行政担当の飯野美智子氏(文部省),理科教育担当の下條(東学大),数学教育担当の町田彰一郎氏(埼玉大),協力企画担当の比嘉京治氏(JICA)の構成であった。
これは,本プロジェクトの具体的な活動の骨格をきめるための調査であったので,少し詳しく述べたいと思う。
7/6の10:50成田発,ジャカルタ着は16:05。翌7/7から活動に入った。7/7には,JICAインドネシア事務所での打ち合わせ,日本大使館および教育文化省表敬訪問の後,高等教育総局と協議,BAPPENASを表敬した。翌7/8からは,高等教育総局および3IKIP代表者との協議を何度も重ね,7/14の午後R/D(討議議事録)の署名・交換に至った。7/15は団員の個別担当事項の調査とJICAジャカルタ事務所への報告の後,帰国した。
協議項目は,協力開始時期及び期間,プロジェクト実施体制,プロジェクト基本計画,日本側投入,イ国側投入,初中等教育総局との連携協力方法などであった。
次に協議の結果について,実施協議調査団報告書を基に述べる(国際協力事業団社会開発協力部 1998b)。

11-2-1 実施協議調査団の派遣と調査の結果

11-2-1-1 調査団派遣の経緯と目的
これまでの諸調査を踏まえて実施協議に至ったが,これまでの経緯を改めてまとめておく。
インドネシア共和国(以下,「インドネシア」と記す)は,その国家開発計画において人的資源の強 化を最重点課題の一つと定め,国家開発の重要な柱としている。特に国全体の教育拡充をめざして,基礎的教育分野における教員の資質向上,小学校・中学校教員資格に必要な修学年限も延長されることとなった。この結果,現在教鞭をとっている小学校・中学校理数科教員の大半が新規教員資格要件を満たせないことになり,これらの現職教員を対象とした再研修の実施と新資格の付与が急務となっている。
また,教育施設の不足,設備の老朽化・不足,教育にかかわる人材の不足などが問題になっている。 加えて,従来 6 年間であった 義務教育期間を9年間に延長することとし,これに伴うカリキュラム改訂では,科学技術の進歩に対応した理科・数学教育の強化が課題とされている。
こうした学校教育制度の改革に伴い,インドネシア政府 は1994 年,初中 等理数科教育の向上を目的として,国 立教育大学(IKIP ) における理数科教育実施体制の強化及び現職・新卒理数科教員の能力を向上させるためのプロジェクト方式技術協力を,我が国に要請してきた。
これを受けて国際協力事業団は,以下の調査団を派遣した。
プロジェクト形成調査団  1995年 4/2~4/19
基礎調査団        1995 年 11/29 ~12/6
事前調査団         1997年 4/2~ 4/12
長期調査団   1998年 3/1~ 3/14

これらの調査団の調査及び協議結果を受け,以下の項目についてインドネシア側と協議し,討議議事録(Record of Discussions: R/D) を締結することを目的として,本実施協議調査団が1998(平成10)年7/6~7/16までイ国に派遣された。
本調査団の協議項目は,次の通り。
(1) 協力開始時 期及び期間
(2) プロジェクト実施体制
(3) プロジェクト基本計画
(4) 日本側投 入
(5) インドネシア側投入
(6) 初中等教育総局との連携協力方法

11-2-1-2. 調査団の構成 

調査団の構成は,団長/総括担当の河西明氏( 国際協力事業団企画部専門技術嘱託),教育行政担当の飯野美智子氏(文部省学術国際局教育文化交流室文部事務官),理科教育担当の下條隆嗣(東京学芸大学教育学部理科教育学科教授),数学教育担当の町田彰一郎氏(埼玉大学教育学部数学教育講座教授),協力企画担当の比嘉京治氏(国際協力事業団社会開発協力部社会開発協力第一課特別嘱託)の5名であった。

11-2-1-3. 調査日程

7/6(月) 10:50成田発,16:05ジャカルタ着
7/7(火) 終日:JICAインドネシア事務所打合せ,日本大使館・教育文化省表敬,高等教育総局と協議,国家開発企画庁(BAPPENAS)表敬
7/8(水) 終日:高等教育総局,3IKIP 代表者との協議
7/9(木) 午前:高等教育総局,3IKIP 代表者との 協議,午後:高等教育総局との協議
7/10(金) 午前:団内打合せ,午後:団員の個別担当事項調査
7/11(土)~7/12(日) 資料整理
7/13(月)午後:高等教育総局との協議
7/14(火) 午前:高等教育総局との協議,午後:R/D 署名・交換
7/15(水)午前:団員の個別担当事項調査,午後:JICA 事務所への報告,23:30ジャカルタ発
7/16(木) 8:40 成田着

11-2-1-4 主要面談者

<インドネシア側>
Prof. Dr. Juwono Sudarsono 教育文化省大臣
Prof. Dr. Bambang Soehendro 高等教育総局長
Dr. Satoryo Soemantri Brodjonegoro   高等教育総局学術局長
Dr. Fasli Djalal,Ph.D. 国家開発企画庁宗教教育文化スポーツ局長
Mr. Harry Firman バンドン教育大学理数教育学部学術担当副学部長
Prof. Dr. H.S.Hamid Hasan バンドン教育大学副学長
M.A. Dr. Utari Sumarmo           バンドン教育大学理数教育学部長
Dr. Achmad A. Hinduan バンドン教育大学
Drs. Sugeng Murdibjono M.A. ジョグジャカルタ教育大学副学長
Mr. Djemari Mardasi ジョグジャカルタ教育大学副学長
Drs. Suharidi,M.Pd. ジョグジャカルタ教育大学理数教育学部長
Drs. Marsigit M.A. ジョグジャカルタ教育大学
Mr. Murdibyono  マラン教育大学副学長
Drs. Gatot Muhsetyo,M.Sc. マラン教育大学理数教育学部長
Ms. Herawati Susilo マラン教育大学

<日本側>
嶋崎郁 在インドネシア日本大使館参事官
加藤敬 在インドネシア日本大使館一等書記官
諏訪龍 国際協力事業団インドネシア事務所長

11-2-2 調査の要約
本実施協議調査団は ,1998年 7 月 6 日から 7 月16 日 までの日程でインドネシアを訪問し,同国政府関係各機関と協議を重ねた結果,プロジェクト方式技術協力「インドネシア初中等理数科教育拡充計画」に係る討議議事録 (R/D) の署名を取り交わした。これにより ,1998 年 IO 月 1 日か ら 5 年間にわたって,同プロジェクトの技術協力が開始されることになった。
本プロジェクトは,インドネシアの教員養成機関であるバンドン,ジョグジャカルタ,マランの 3 国立教育大学(IKIP) の理数教育学部において,学部教育の質の向上,無資格教員への資格付与教育内容の改善及び運営管理体制の強化を図ることを目的とし,ひいては,初中等教員の質を向上させて,科学技術の進歩に対応した数学・理科教育の強化・充実をめざすものである。
今般の実施協議では,プロジェクトのマスタープランが確定し,暫定実施計画,プロジェクト・ デザイン・マトリックス(PDM ) についても合意がなされた。
これらによると我が国は,長期専門家 4 名(チーフアドバイザー,業務調整,理科教育,数学教育)を派遣するほか ,短期派遣専門家を年 IO 名程度(物理教育,化学教育,生物教育,地学・ 環境教育,数学教育,学部運営など)投入するとともに,インドネシア側カウンターパートを年数名程度,日本研修に受入れ,一方では理数科教育用機材などの供与を行うこととしている。
また,プロジェクトはインドネシア教育文化省高等教育総局長を総括責任者とする実施体制のもとに展開され,その円滑な運営のために,合同調整委員会,運営委員会,ワーキンググループ, タスクチームの各組織体制が創設される。
インドネシアでは近年の政変や金融危機にもかかわらず,1998 年度は大学教官 2,000人,初中等教員 2万人の新規採用を行う予定であるなど ,義務教育9 年制をめざし て,教育分野 への投入は着実に進められている。本プロジェクトは,同国のこうした人的資・資質向上に大きく貢献することとなろう。

11-2-3 教育分野の国家開発計画との関連
教育分野における開発計画については,国家政策大綱(1993年3月発表)においてその方向性が,また第 2 次長期国家開発 25ヶ年計画において具体的な目標が示されている。さらに第2次計画開発25 ヶ年計画はその目 標に沿って,第 6 ~第10 期の各 5ヶ年計画が策定され実施される。1998年月からは第 7期 5ヶ年計画の実施期間に入っている。
教員定数と採用計画については,現在公務員全体の新規採用数の伸び率は0 %であるが ,教育分野につ いては 199 8年度は大学教官 2,000 人,初中等教員2万人の新規採用を行う予定である。これは,政策における教育の重要性にかんがみ,公務員の全体数400万人は変更なく抑えつつも ,教育分野においては退職予定者数を補充し,全体の数を維持するためである。
教員志望者数を高める方策については,義務教育の9 年化に伴う生徒の就学率増加施策を 1993年から 2003年の期間で実施中であるが ,学校の生徒受入れ数は増加し,新入学生徒数は前年度 10 万人であったところ,1998 年度は 12万人となって伸び率は20 %であり ,これに伴い教員への需要は高まっている。
このように,本プロジェクトの実施はこれらのインドネシア政府が国家開発計画のなかで示している教育分野における開発の方向性に沿うものであることが今次調査において改めて確認された。

11-2-4 協議結果
11-2-4-1 協力期間
協議の結果 ,1998 年1 0 月 1 日 にプロジェ クトを開始し,協力期間は 5 年間とすることで合意した。
11-2-4-2  プロジェクト実施体制
本プロジェクトの総括責任者は高等教育総局長であり ,実施機関はバンドン教育大学 (IIUPバンドン),ジョグジャカルタ教育大学 (IK IP ジョグジャカルタ),マラン教育大学(IKI Pマラン)の3 教育大学の理数科教育学部とした。プロジェクト運営の効率化及び日本側の専門家派遣などの実施体制や予算をかんがみて,3IKIPの特色を生かした個別の体制ではなく,可能な限り3大学を1つの組織体としてプロジェクト運営組織を編成することを日本側案とし提示し,インドネシア側の同意を得た。これにより,プロジェクト活動に伴う成果品の開発はプロジェクト実施のために新たに 創設する3IKIP 合同編成の組織が担うこととなる。また,成果 品の試行,普及については学部長を頂点とした従来のIKIP理数科教育学部の組織を利用するものの,試行・普及の責任はインドネシア側が負うこととなった。新たに創設した組織は以下のとおりである。
(1) 合同調整委員会 (Joint Coordinating Committee: JCC)
プロジェクトの運営にかかわる最高位の意思決定機関として合同調整委員会を設置する。

(2) 運営委員会 (Steering Committee)
プロジェクト実施の政策決定 ,監督責任,3IKIP 間の調整機関として運営委員会を設置する。

(3) ワーキンググ ループ
後述のタスクチームが実施するプロジェクト活動の各IKIP 内での円滑な運営を図るためにワーキンググループを 設置する。ワーキンググループは学科ごとに3IKIPの理数科教育学部に並列的に設置されるが,そこで検討された活動計画や成果品の素案は,各学科ごとに3IKIP 合同で開催されるワーキンググループ会議で最終案として取りまとめ,運営委員会に報告することとする。

(4) タスクチーム
プロジェクトの活動や成果品開発の実際の担 い手として各IKIP は,物理教育 ,化学教育,生物教育,数学教育の学科ごとに,①カリキュラム・教科教育,②シラバス・教授法,③教材開発,④教育評価法・学術交流の4つのタスクチームを設置する。
11-2-4-2 プロジェクト基本計画
ロジェクト基本計画につき,以下のとおり合意した。

(1) 上位目標

インドネシアの児童生徒の学力,応用力を向上するために,プロジェクトで得られた成果を 高等教育教員養成機関に普及させる。

(2) プロジェクト目標
IKIP バンドン,IKIP ジョグジャカルタ,IKIPマランの理数科教育学部の 卒業生が学校現場での教育を向上させる。
(3) プロジェクトの成果
1) 3 IKIP の学部教育の質が向上する。
2) 現場教員への資格付与プログラムが強化される。
3) 3 IKIP の理数科教育学 部の運営能 力が強化される。

(4) プロジェクト活動
プロジェクト活動は以下のとおりとなった。

1-1 小中学校教育の実態調査を行う
1-2 3IKIPにカリキュ ラム・教科教育,シラバ ス・教授法,教材開発,教育評価,学術交流作業部会を設置する
1-3 タスクチームの研究会を定期的に開催する
1-4 教材開発を行う
1-5 教材使用方法について研修を行う
1-6 開発教材のモニタリングを実施する
1-7 シラバスの見直し・改訂を行う
1-8 改訂シラバスのモニタリングを実施する
1-9 教科教育法を研究する
1-10 実験・実習にかかわる教授法の研究をする
1-11 実験・実習にかかわる指導書を作成する
1-12 実験・実習にかかわる指導計画を評価する
1-13 教育評価法の実情を調査する
1-14  教育評価法を開発する
1-15 改訂教育評価法のモニタリングを実施する
1-16 教育評価法をモニタリングする
1-17 学生用教科書を作成する
1-18 指導ガイドを作成する
1-19 小中学校モニタリング対象地域・学校を選定する
1-20 モニタリング・評価法の研究会を実施する
1-21 小中学校のモニタリングを定期的に実施する
1-22 教員養成機関のカリキュラムに関する提言
1-23 外部教官を対象としたセミナー,ワークショップを開催する
2-1 現職教育のカリキュラム,シラバスを研究する
2-2 現職教育のカリキュラム,シラバスを改訂する
2-3 現職教育の改訂カリキュラム,シラバスをモニタリングする
2-4 現職教員資格付与プログラムの実態を調査する
2-5 現職教育の教授法を研究する
2-6 現職教育用教科書を作成する
2-7 現職教員の資格取得状況を調査する
2-8 現職教員資格付与プログラムのモニタリング・評価法を研究する
2-9 無資格教員の資格付与プログラムの効果をモニタリングする
3-1 プロジェク活動の各委員会・作業部会を運営する
3-2 各委員会・作業部会間の連絡協議を実施する
3-3 各委員会・作業部会の活動を評価する
3-4 設備・機材が整備される
3-5 現地語機材操作マニュアルを整備する
3-6 機材操作方法についての研修を行う
3-7 設備・機材の維持管理に係る研修を行う
3-8 設備・機材管理体制の強化を行う
3-9 ニュースレター,ジャーナルを発行する

11-2-4 双方の投入計画
(1) 日本側投入計画

日本側投入計画につき以下のとおり合意した。
l) 専門家派遣
<長期派遣専門家>
チーフアドバイザー,業務調整員,理科教育,数学教育
<短期派遣専門家>
物理教育,化学教育,生物教育,地学・環境教育,数学教育,学部運営,その他
2) 機材供与
① 技術移転に必要な機材を供与対象とする。
② 卒業研究を含めた研究用機材は除き,理数科教育学部の教育に必要な機材を供与する。年度別の供与機材の内容,仕様については年間実施計画で決定する。
3) 研修員受入れ
本プロジェクトのカウンターパートを研修員として受け入れる。

(2) インドネシア側投入
1) カウンターパート(CP)
インドネシア側が以下のカウンターパートを配置することを合意した。
① 高等教育総局長,②高等教育総局学術局長,③バンドン教育大学学長,④ジョグジャカルタ教育大学学長,⑤マラン教育大学学長,⑥Ⅵ支援3大学理数教育学部の学部長,庶務・経理担当の副学部長,学術担当の副学部長,ローカル・コーディネーター
⑦支援3大学理数教育学部の以下の学科長
数学教育学科,物理教育学科,化学教育学科学,生物教育学科
⑧ 支援3大学理数教育学部のの数学教育学科,物理教育学科,化学教育学科,生物教育学科の教官のなかからプロジェクト活動に必要な次の人材
事務職員,タイピスト,運転手,そのほか必要な職員
2)施設
以下の施設をインドネシア側は提供することで合意した。
① バンドン教育大学,ジョグジャカルタ教育大学,マラン教育大学理数科教育学部の施設
② 専門家のための執務室
③ その他
3) インドネシア側の予算措置
日本側は,経常経費及びその他プロジェクト運営に必要な各種予算についてインドネシア側からの適切な処置を要請し,インドネシア側は 3IKIP合同の会合に係るカウンターパートの旅費なども含め最大限努力することを確認した。インドネシア側からは,教育文化省予算は最近の金融危機に伴う財政引締政策から例外的な扱いが承認され,1998 年度も計画どおり予算執行が認められて いるとの報告を受けた。しかしながら,1999 年以降の予算については政治的な不安定さからみて,日本側の例外的な対応も考慮する必要があるとのコメントが,日本大使館及び J ICAインドネシア事務所からあった 。
4) 専門家に対する便宜供与
インドネシア側から専門家への家具付き家屋の提供について,最近の財政逼迫の現状から提供が困難であるとの説明があったが,本文は国際協約に基づいており,削除に同意できないとの立場を説明し,日本側原案どおり記載することで日本・インドネシア双方が合意した。

11-2-5 その他の協議結果
(1) プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)
長期調査では,日本側が予定していた3IKIP 合同のワークショップにおけるPDMの作成が完了できなかったため ,本調査団は PDMについて関係者と協議した。当協議は,要請書及び長期調査時の各IKIPとの個別協議結果,その後の本邦内での検討結果,長期調査員の帰国後インドネシア側から提出されたPDM 案を踏まえて作成された日本側案に基づいて行った。日本側原案を土台に3IKIP からの新たな提案を受けて PDMを完成し,基本計画として記載するとともに,PDMをミニッツに添付することとした。また,PDMはプロジェクト運営のガイドラインとして活用することとし,プロジェクト活動を通じて双方の合意により発展的に改訂することを日本・インドネシア双方で確認した。
(2) プロジェクト実施計画
日本・インドネシア双方は暫定的なプロジェクト実施計画について協議し,プロジェクトの 実施期間,インドネシア側の投入,日本側投入としての専門家派遣,研修員受入れ,機材供与 の暫定実施計画(Tentative Schedule of Implementation: TSI) について合意した。プロジェクト実施の5 年計画は,プロジェクト開始後1999 年 3 月末までに作成することとし ,1998年度プロジェクト実施計画はプロジェクト開始後,1 ヶ月以内に完成することとした。

( 3) 初中等教育総局との連携
プロジェクト活動の効果的波及やプロジェクト活動実施のために初中等教育総局及び小中学校現場の協力が必要不可欠であることから,合同調整委員会のメンバーとして,初中等教育総局の初等教育局長,中等教育局長,教員・技術者研修局長を加えること,また,プロジェクト活動に,必要に応じ国立教員養成研修センター(PPPG) などの参加を得るなどして高等教育総局が主体的に初中等教育総局との連携・協力関係を強化することで合意した。
国家開発企画庁(BAPPENAS) からも教育文化宗教局長から本プロジェクトは初中等教育のプロジェクトであり,初中等教育総局の関与が効果的な成果を得るために必要であるとの意見が述べられた。

11-3. 実施協議について-筆者の意見
本プロジェクトは,実施協議においてほぼ準備したR/D通りに締結された。本プロジェクトは1998年10月1日から開始され,5年間にわたることになった。
経済状況が逼迫しているにもかかわらず,高等総局,IKIP教官は本プロジェクトに強い期待を寄せている。
今回は,イ国側から,3IKIPの代表者も参画し,2日間にわたりプロジェクトの活動内容や組織についても協議を行った。
イ国側は,経済状況の逼迫にもかかわらず,人材育成に禍根を残さぬように,本件の実施を望んでいる。ただし,経済情勢の逼迫のため,活動内容の見直しはありうる。それは派遣専門家にもよる。強く拘束できないため,内容・組織共に柔軟性を持たせることとなった。
以下,特に,プロジェクト実施上の留意点について,理科教育の立場から筆者の意見を述べる。

11-3-1 本プロジェクトの全体的見通し
本プロジェクトで実施する活動は,資格賦与の現職教育を主として,IKIPにおける科学の中身+指導法(機器・実験室管理を含む),学校における指導法,教材開発,評価
(大学の授業,学生の指導法の評価)とコミュニケーションの4分野を算数・数学,物理
・化学・生物領域で行うことになった。普及も視野に入れてある。
プロジェクト全体では,半分は実験設備機器とその活用が各分野で行われるようにすること。半分は,理数科教育研究が立ち上がること。特に教科教育的研究であると考えられる。
本プロジェクトや無償協力による3IKIPへの機材の供与は,機材の購入が経常的に困難なことから特に重要と考えられる。

11-3-2 本プロジェクトで行われる活動について
活動は2つの面からみることができる。
一つは,算数・数学,物理・化学・生物という科学の領域であり,他の面は,①教師養成および現職教育における科学的内容の教育,実験室管理,②学生・現職教師の学校における指導法,③教材開発および④教育評価・交流である。前者は科学領域別という側面であり,後者は教育活動内容別という側面である。実際の教育は,両者の他に,これらの活動を維持・管理・発展させる活動(本プロジェクトを進める仕組み)があり,これらが複雑に関与しあっている。維持・管理・発展的側面を別にすると,各科学領域の中に①から④の活動が存在するともてもよいし,また,①から④の中に,算数・数学,物理・化学・生物の領域が存在するとみてもよい。したがって,これらの活動をどちらの面からまとめてゆくかによって,組織の構成は異なったものとなる。それぞれに,次のような長所と短所がある。

○科学領域的側面に基づいた組織構成長所:組織としては単純でよい。
短所:科学の各領域に配置された要員が,必ずしも教育活動内容全般に精通していないことが考えられること。
総合的な内容の教育へ変化に対応できにくい。
○教育内容的側面による組織構成
長所:学校教育への対応が強くなる。
短所:組織がかなり大きなものとなり,錯綜する。

これらの内,教育内容的側面によって組織を構成しようとすると,それが非常に多くの要素を含み,各要素に算数・数学,物理・化学・生物からの人員を配置することとなって,組織はかなり大きなものとなり,錯綜することが予想される。ただし,学校教育への対応が強くなるという長所がある。したがって,科学領域別に人員を配置し,それらの人員によって教育活動内容を研究・開発する方が,組織としては単純でよい。しかし,これには短所も存在する。それは,まず,算数・数学,物理・化学・生物に配置された要員が,必ずしも教育活動内容全般に精通していないことが考えられること,また初等・中等科学教育段階において,先進国では,算数・数学,物理・化学・生物という明確な分割から総合的な内容の教育へ変化しつつあるため,総合の面からは時代に対応できなくなる可能性があることである。しかし,イ国においては,現在,中学校理科では教師は物理・化学・生物のいずれか一つを教えればよいことになっており,また本プロジェクトが,中等教育を主とすることから,科学領域的側面に基づいた組織構成をとるもやむを得ないと考えられる。  教官→教員?

算数・数学,物理・化学・生物の教員は,各IKIPに必ず配置されている。一方,教科教育や現職教育については,各IKIPにその学科が置かれていないので,その専任教員は配置されていない。また,その分野広く,学校-大学-地方教育行政機関について地域性が強いことなどが考えられるので,算数・数学,物理・化学・生物の教官で,3大学共通のワーキング・グループを結成し,その内部にタスク・チームを造るという共通構造をつくり,さらにこれらを,3IKIPで共有する構造とした。活動やタスクの内容は,3IKIP代表と相談の上,決めた。

活動を維持・管理・発展させる仕組み(本プロジェクトを進める仕組み)は次のようになった。実質的な責任者は,3IKIPの理数教育学部(FPMIPA)学部長(dean)である。この学部長を学事担当副学部長(assistant dean of academic affaires)と本プロジェクトのコーディネイター(3IKIP)が補佐する。

11-3-3 実施の責任体制について
開発過程とその成果の普及過程。後者はイ国側の責任において行う。組織構成,行政的な責任,スティアリング・コミッティ:省略

11-3-4 初等中等教育局との関連
初・中等学校における授業改善活動の効果の検証のため,初中教育局との連動や協力が必要である。BAPENASでは,初等教育に莫大な予算を投入してきたが,教育の効果は上がっていないとい趣旨の発言が長からあった。これは,教師教育が重要であることが,イ国において,これまで十分に認識されてこなかったことが原因の一つであろう。本プロジェクトの意義が伺われる。

11-3-5 重点化について
今回,イ国高等総局側は,これまで通り,協議初日に協力を3支援大学で重みをつけるという重点化を主張したが,非適切性を述べ理解を求めた結果,その後は主張せず,R/Dにも記載されなかったが,これまでの経緯をまとめておく。
イ国側の主張は,無償協力を含めた全体予算(15,000,000 米ドル程度)より,IKIPバンドンの理数科教育棟の建設費を引いた残りを,3IKIPの理数科教育学部各学科へ機材を平等に配分すると,非常に薄くなることを危惧している。重点化は,良い教師の養成のためには,強い学部をつくることが重要である。そのため,現在比較的強い学科を特化することが,早く発展するために必要であるという効率主義的考え方によっている。
しかし,筆者には,この考え方は妥当とは思われない。3IKIPは,日本で言えば東北,関東,関西地方の大学ほど互いに遠く離れているため,各IKIPは,その地方のセンターやモデル校的な役割を果たすべきであり,そのためには,各IKIP内の理数教育学部の各学科が均等に発展してゆくことが望ましい。重点化した場合,学生や教師が移動するのは困難である。これまでの視察から,重点化すると,はずされた学科の教官はやる気を失うことが予想される。学部ですでにばらつきがあり,重点化はそれをさらに強化してゆくことになる。また,長期的には,一人の中学校教師が,複数の分野を教えるようになることも考えられる(総合化へ向かう場合)。こうしたことから,本プロジェクトでは,3IKIPで均等な発展を強く意識した協力を行うように特に留意する必要がある。輸送費用等付帯経費が大きくならなければ,また研究用機材を除けば,かなりの機材が入るものと考えられる。重点化は,派遣や受け入れで色をつける。(なお,IKIPバンドンの理数科教育棟の建設は,日本政府の無償資金協力で行われた)

11-3-6 活動の中身(理科分野)-マスター・プラン-
(まだ,R/D締結直前のものに直していない)
活動の中身について,IKIPの代表と協議した結果,把握したもの。多分に当方の見解も入っている。基本的姿勢は,自助努力を高めてゆくことである。
以下の各活動に関与する「タスク・チーム」と「プロジェクト管理者」を角括弧内に示

した。括弧内の記号は以下の略号である。
De:Dean Co:Coordinator
A:タスク・チームA(教育課程および教科内容) B:タスク・チームB(シラバスおよび指導法) C:タスク・チームC(教材)
D:タスク・チームD(教育評価および計画推進のためのコミュニケーション)

(1-1)初等中等教育の現状調査 [A,B,C,D]
算数・数学,物理・化学・生物領域について,初等中等教育の現状調査を行う。これは,本プロジェクトの今後の活動をより効果的にするための基礎になるものと位置づけられる。政府の教育統計はあるが,算数・数学,物理・化学・生物領域について,調査は無いのではないか。調査項目を同定してゆくことが大切。大規模な調査は費用の関係で不可。
(1-2)教育課程,シラバス,指導法,評価および教材についての作業ティームの創設[De, Co]
(1-3)3IKIP間定例研究会の創設 [De, Co]
(1-4)教材開発 [C]
(1-5)教材活用についての研修の実施 [A, B, C]
(1-6)開発された教材の適切性のモニター [A, B, C]
モニターの意味
(1-7)シラバスのレビューと改善 [A, B]
ここで,シラバスは,大学用,学校用の両者をさす。
(1-8)改定シラバスの適切性のモニター [A, B]
(1-9)各教科の指導法 [A,B]
(1-10)実験および指導法に関する指導法の研究 [A, B]
ここで,実験とは観察,野外調査など,座学ではなく,活動を伴う授業をさす。
(1-11)実験および指導法に関する教授マニュアルの改定 [A, B]
(1-12)実験活動および教育実習の指導案の適切性の評価 [A, B]
(1-13)算数・数学および理科の教授における従来の評価法のレビュー [A, B, D]
(1-14)算数・数学および理科の教授におけるこれまでと異なる評価法の開発[A, B, D]
(1-15)これまでと異なる評価法の適切性のモニター [A, B, D]
(1-16)評価法の改善 [A, B, D]
大学レベル,学校レベル
(1-17)学生用の新しい教科書の開発 [A, B, C]
数学,物理・化学・生物の大学レベルと教科教育教科書
(1-18)指導書の開発 [A, B, C, D]
学生・現職教師が学校現場で教授活動を行う際のガイド
(1-19)モニタリングを行う地域と学校の選別 [De, Co]

(1-20)学校のモニタリングと評価について研究会の開催 [De, Co]
(1-21)学校の定例モニターの実施 [De, Co, D]
(1-22)教師養成機関の教育課程への提言 [A, B, C]
本プロジェクトの成果は,全国10のIKIPおよびLPTKへ普及することが目標の一つになっている。
(1-23)LPTKの教官に対するセミナーやワークショップの開催[De, Co, A, B, C, D]
(1-22)と同じく,成果の普及

(2-1)現職教師研修のための教育課程とシラバスの研究 [A, B]
(2-2)現職教師研修のための教育課程とシラバスの改定 [A, B]
(2-3)改定された現職教師研修のための教育課程とシラバスの適切性のモニタリング[De, Co, A, B]
(2-4)現職教師のための現行の学位プログラムについての調査の実施 [De, Co, A, B]
多くの未資格教員が存在(特に中学校)しており,本プロジェクトのそれらの教員に資格を賦与することが主要な目的である。そのためのIKIPにおける現行の研修プログラムあるいはコースについて,実態を調査する。学生数,コースの
種類,内容,PRE-SERVICE との差異などを明らかにすることが考えられる。
(2-5)現職教師研修のための教授法の研究 [De, Co, A, B]
学部レベルと学校レベル。教師養成(pre-service)との関連
(2-6)現職教師研修用教科書の作成 [A, B, C]
(2-7)現職教師の資質についての調査の実施 [De, Co, A, B]
(2-8)現職学位取得コース・プログラムのモニタリングと評価法の研究[De, Co, A, B, D]
(2-9)現職教師研修プログラムの効果についてのモニタリング [De, Co, D]
(3-1)作業グループとタスク・チームを動かす。 [De, Co]
(3-2)作業グループ間のネットワークの確立 [D]
(3-3)活動(3-1)の評価 [De, Co]
(3-4)必要な装置・器具の設置 [De, Co, D]
(3-5)イ国語の機器使用マニュアルの作成 [De, Co, C, D]
英語は machinery 日本人にわかるようにしておく必要がある。
(3-6)機器使用の研修の実施 [De, Co, C, D]
(3-7)装置・器具の維持・補修の研修の実施 [De, Co, C, D]
(3-8)Utilities および器具の管理システムの強化 [De, Co, D]
(3-9)本プロジェクト参加者間の交流のためのニュース・レター及び/またはジャーナルの発行 [De, Co, A, B, C, D]
相互に遠隔地にある3IKIP間の交流,3IKIP間と他のIKIPやLPTK,本プロジェクト参加学校との交流,計画の成果や進捗状況の通知

当初は3IKIPが中心となって,将来学会が立ち上がるための基礎となることが望ましい。5年間が終了しても,ジャーナルはイ国の費用で続ける意向。

11-3-7 タスク・チームの活動と成果
▽タスク・チームA(教育課程および教科内容) これは大学レベル
a.現職教師研修のための改定教育課程
b.現職教師研修のための新しい教育課程のモニタリングとその報告書
c.教師養成のための教育課程改善の草案
d.実験科目のための指導書作成
どのような実験が必要か
e.実験科目のための実験手引き書作成
f.実験科目の指導法のモニタリングとその報告書
g.教育実習の仕方
授業研究法
h.教育実習と学級活動のモニタリングとその報告書
教育実習は学生,学級活動は現職教師
i.各学科別実験室管理ガイド

▽タスク・チームB(シラバスおよび指導法)
a.現職教師研修用の指導案
b.現職教師研修用の指導案のモニタリングとその報告書
c.教師養成用の指導案
d.教師養成用の指導案のモニタリングとその報告書
e.指導法の改善
現職教師研修用と教師養成用の両指導法に対して
f.指導法の適切性についてのモニタリングとその報告書
g.学校理科室・実験室管理ガイド
理科の場合,電源,明かり,薬品の安全管理,排水処理等の機器保守

▽タスク・チームC(教材)
a.現職教師研修用テキストの開発
b.教師養成用テキストの開発
c.テキストの適切性についてのモニタリングとその報告書
d.教材(学校)
e.教材の使用法(活用マニュアル)
f.教材の適切性についてのモニタリングとその報告書

▽タスク・チームD(教育評価および計画推進のためのコミュニケーション)
a.学校活動の評価ガイドの開発
b.学級活動の評価とその報告書
c.形成的評価とその報告書
d.ニュース・レターまたは雑誌の発行

11-3-8 資料
資料として,理科の教科書を若干入手した。国家指定の学習指導要領の資料入手は,今後の課題である。

11-3-9 次に考慮すべきこと
1)短期専門家の派遣
専門家派遣は,タスク(活動内容)が明確になってきたことから,それに対応するようにする。具体的には,プロジェクト開始後,ニーズに適切に対応しながら派遣する。各時期で異なるニーズがある(活動表参照)。
例:
調査(タスクA,B,C,D)
教科教育学(タスクB,タスクC) 機材活用(タスクB,C)
算数・数学,物理・化学・生物内容指導(タスクA)
算数・数学,物理・化学・生物

2)研修の受け入れ体制
タスクに対応して,研修受け入れ体制を構築が必要になる。具体的には,プロジェクト開始後,ニーズに適切に対応しながら受け入れる。各時期で異なるニーズがある(活動表参照)。

3)調査項目
主として,本プロジェクトの初期調査項目としては,
・実験の実態(実験の種類,機器の種類,機器・薬品等の管理,参考図書等)
・実習の実態
・教科書の実態
・現職教師研修の中身
・形成的評価の実態
・カリキュラム理念
・カリキュラムの変遷
・実験室管理の実態
などが考えられる。

参考文献  〔 Ⅱ. 事前の動き-各種調査団の派遣〕

国際協力事業団社会開発協力部:インドネシア初中等理数科教育拡充計画基礎調査団報告書,平成8年1月,1996.
国際協力事業団社会開発協力部:インドネシア初中等理数科教育拡充計画事前調査団帰国報告会資料,平成9年5月12日,1997.
JICA: インドネシア初中等理数科教育拡充計画長期調査帰国報告会資料,平成10年3月,1998.
国際協力事業団社会開発協力部:インドネシア共和国初中等理数科教育拡充計画実施協議調査団報告書(本編),平成10年)8月,1998.