Ⅳ. 中間評価および終了時評価

14. 運営指導(中間評価)調査団派遣

2001(平成13)年3/21~4/7にわたり,運営指導(中間評価)調査団がイ国へ派遣された。団員構成は,総括担当の下條隆嗣(東学大),理数科教育担当の遠山紘司氏(神奈川大),評価担当の田中紳一郎氏((株)パデコ),調査企画担当の角河佳江氏(JICA)であった(JICA 2001a)。
日程は,日本から国際教育協力の評価を専門とするコンサルタント会社から派遣された田中紳一郎氏が前もって3/21~3/30にわたり,3大学やBAPPENAS,高等教育総局,初中等教育総局を回って調査し,評価PDM案を作成した(JICA 2001b)。4/1以降,調査団員がイ国へ到着した。4/2に日本大使館,JICAジャカルタ事務所,BAPPENAS,高等教育総局,初中等教育総局との打ち合わせを行った。4/3~4/5にかけてプロジェクト関係者との協議を行った,4/6にミニッツ署名を実施し,日本大使館,JICAジャカルタ事務所へ報告後,帰国便にのる。4/7成田着。
田中紳一郎氏が協議に先立って,事前に3大学等を回り,PDMに従って調査に当たったが,この評価の結論は,パイロティングに遅れがみられるので,後半で遅れを挽回するべきであるということであった。3大学の教員が集まった評価会議において,田中氏から,私からこのことを参加者に話すように頼まれて話した。そしてこれを契機に,このプロジェクトの後半部では理数科教師養成の基盤整備から学校の授業を直接改善するパイロティングへと一気に加速していった。
この評価でよい評価点を得た事項ももちろん多数あるが,最も大きな問題点は,学校と密着した活動の遅れ(パイロッティングと呼ばれる)であった。これは,インドネシア教育大学の理数科棟が完成したのがプロジェクト開始2年後であり,また供与機材の使いこなしや管理や大学の授業改善などの基盤整備に時間を取られてやむを得ない面があったと思う。確かにパイロッティングの遅れがあり,気になっていたところだ。しかし,理科教育においては,教師は科学についての力量と授業力の両者を持つことが要求される。後者については,中間評価以前の当初の担当者会議(タスク・チーム)で方法が議論された際に,筆者は研究授業を強く勧めた。これは(財)教科書研究センターの研究で米国のコロンビア大学を視察した際に,米国でも日本の研究授業に着目して取り入れ始めていることを同大の研究者から伺ったことを思い出して,インドネシアでも有効ではないかと考えたためであった。イ国側も私の提案を受け入れ,そしてパイロッティングがスタートした。

15.終了時評価調査団の派遣と評価結果

2003(平成15)年3/23~4/9にわたり,終了時評価団がイ国に派遣された。団員構成は,団長の乾英二氏(JICA社会開発協力部社会開発協力第一課長),理科教育担当の下條(東学大),教育行政担当の遠山紘司氏(神奈川工科大),教育計画担当の久保木勇氏(青年海外協力協会),評価企画担当の小林美弥子氏(JICA),評価分析担当の田中紳一郎氏((株)パデコ)であった(JICA 2003)。
3/23(日)成田発,ジャカルタ着。翌3/24にジャカルタからバンドンへ移動し,3/25迄インドネシア教育大学現地調査,3/26マランへ移動し3/28迄マラン大学現地調査,3/29マランからスラバヤ経由でジャカルタへ移動,3/30(日)~3/31データ収集,分析調査結果まとめ,4/1ジョグジャカルタ大学現地調査,4/2ジョグジャカルタからジャカルタに移動し,団内打ち合わせを行い,4/3にBAPPENAS,教育省高等教育総局,教育省初中等教育総局訪問,JICAインドネシア事務所(神田所長,大竹次長)と面談,4/4ジャカルタからバンドンへ車で移動,IMSTEP評価団から評価の目的・方法をイ国教官(カウンターパート)へ説明,専門家/カウンターパートへのインタビュウー,4/5パイロッティング現地調査,4/6バンドンからジャカルタへ車で移動(ミニッツ準備),4/7午前に合同調整委員会(JCC),午後にミニッツ署名・交換,4/8日本大使館,JICAインドネシア事務所報告,23:55帰国便搭乗,翌4/9の9:50朝成田着。

15-1. 調査の方法
調査の方法は,「JICA 事業評価ガイドライン」に準拠し,計画達成度,実施プロセス,及び評価 5項目の観点(妥当性,有効性,効率性,インパクトおよび自立発展性,)から評価を実施した。
調査の手法は,資料のレビュー,質問票調査,およびインタビューによって行った。質問票調査およびインタビューはカウンターパート(教育省インドネシア教育大学,マラン国立大学,ジョグジャカルタ教育大学),及び日本人専門家を対象とした。
中間評価時同様,「活動進捗指標マトリクス」「パフォーマンス指標マトリクス」が3 大学により準備された。これらマトリクスにはプロジェクト指標が網羅的に収録されている。効率的な情報収集,分析,照合に大きく貢献した点は特筆される。

15-2. 終了時評価調査の結果(全体および分野・タスク別要約表)
評価の結果については,以下に,「調査結果要約表」,数学および物理・化学・生物各「分野別評価結果」,タスクチームA(教育課程及び教授内容),同B(カリキュラム及びシラバス),同C(教材開発),同D(教育評価及び学術交流)の各「タスク別評価結果」,並びに全体の「評価結果」および「総括」を,「終了時評価報告書」(JICA 2003)から抜粋して紹介する。

15-3 終了時評価の結果
15-3-1 プロジェクトの実績
本プロジェクトは,終了時までにおおむね当初の目標を達成できると結論される。学部教育, 現職教員再訓練の質向上の項目(成果1 ,2 )についても,学部運営能力(成果3 ) についても,当初の計画に沿ってプロジェクトは成果を上げつつある。
学部教育については,学生はより短期間で,かつより好成績で学部を卒業する傾向にあり,プロジェクト実施を通じ,より優秀な学生が育成されつつあることが示された。また,「生徒中心型」「実験・体験重視型」の授業手法は,大学の授業・演習,パイロットパートナー校の両者にて,授業・学習の質を改善する手法として歓迎されている。
本プロジェクトでは,各学科に垂直的な「ワークグループ」と学科をまたいだ水平的な「タスクチーム」の両者をプロジェクト実施組織として設置した。この組織を通じて学科・学部内外の連 絡・交流が再活性化され,学術研究・教育の両面で学部の運営能力が向上した。また,各大学に て導入されたコンピューターシステムを通じ,教室・実験室管理及び機材維持管理が向上し,よ り無駄のない学部運営が実現されつつある。
他大学と成果物の共有もおおむね計画どおりなされている。

15-3-2 実施プロセス
プロジェクト対象3 学部,及び国家教育省高等教育総局(DGHE )の支援を得て,プロジェクトはおおむね順調に推移してきている。
「ワークグループ」と「タスクチーム」の実施体制が円滑な事業実施に貢献してきた。各学科,学部,3大学では定期的な協議がなされ,これが各レベルでの事業モニタリングにあたっている。また,この実施体制が関係者間に協カ・協働,及び適度な「競争意識」を醸成し,プロジェクトの進捗に貢献した。

15-3-3 項目による評価
(1) 妥当性
インドネシアの教育状況,日本側の援助政策の観点から,教員育成分野はプロジェクト実施対象として妥当である。
教員能力の向上を通じた初中等教育の質の向上は,インドネシア政策文書では優先順位の高い分野として位置づ けられている(国民評議会による国策大綱「GBHN(1999- 2004)」や国家開発計画「PROPENAS 2000-2004」)。一方,最新の「第4次インドネシア国別援助研究会報告書(国際協力事業団 2000年)」では教員の資質向上が5つの優先分野のうちのひとつとしてあげられている。
教育手法,教育理念的にも,本事業が推進した「生徒中心型」「実験・体験重視型」授業・学習 法は,インドネシアの事情に照らして妥当である。同国は,2004年に能力資質重視型カリキュラム(Competency- Based Curriculum : CBC)を導入予定であるが,これも上記の手法・理念を軸においている。
(2) 有効性
プロジェクト成果はプロジェクト目標の達成に貢献しつつある。
より能力の高い学部学生を輩出する見込みが立ち,また,その学生が習得しつつある「生徒中 心型」「実験・体験重視型」授業・学習法に関する一連の技能・能力は,現場の学校にとっても有効であることが,パイロット事業を通じて確認されつつある。授業・学習法の習得には依然として質の向上の余地はあるものの,教育改善の必要条件整備に貢献しつつあるといえる。
(3) 効率性
一部の例外を除き,おおむね本事業の投入は円滑に実施された。一方で,本事業の成果物の点数や,学生の成績向上を考慮すると,本プロジェクトの効率性は非常に高い。限られたプロジェクト期間内に,シラビ・シラバス全面改訂版,3大学間共通教科書,各大学作成の教科書,実験指導書,機材取扱書等,合計200タイトルが作成され,その多くが実際に利用されている。こうした(局所的ではない)全般的な教育投入の質的・量的改善が,学生の学習環境を向上させ,より優秀な学生の輩出に貢献しつつある。
実施体制としては,上述の「ワーキンググループ」と「タスクチーム」のプロジェクト実施体制が,効率的な事業実施にも貢献してきた。
一方で,日本人専門家の投入,及び日本におけるカウンターパート研修については,若干の非効率性が指摘された。日本人専門家の専門が教科教育ではない,派遣期間が日本の大学の休み期間中に偏りがちである,また短期派遣専門家の派遣期間が短すぎるなどの不満を一部のカウンターパートは有している。さらに,特定学科からのカウンターパート派遣数が少ない,多いという強い不満の声も聞かれた。
また,共通教科書作成の進捗が遅れている点がやや懸念される。共通教科書作成手順を2002年以前と以降とで変更したことが背景にあり,日本・インドネシア側双方のコミュニケーションが不十分であったと思われる。
(4) インパクト
本プロジェクトでは予見されていたインパクトと併せ,予見されなかったインパクトも観察される。
予見されていたインパクトは,旧教員養成大学(IKIP) 9大学とのプロジェクト成果品の共有である。各大学には共通教科書,学術雑誌,及びニュースレターが各20部ずつ送付されている。各大学ではシラバス改訂や教科書改訂の際の参考資料として好評とのことである。
予見されなかったインパクト(外部効果)としては,9大大学以外との成果品の共有,②パイロット事業を通じた大学一現場学校のつながり,及び③県教育局とのつながりの形成があげられる。
1) 9 大学以外との成果品の共有
終了時評価期間中に名前が確認された限りでも15大学がプロジェクト対象学部に接触,教 科書,実験・体験重視型授業の教材,教員用指導書などを入手し,それぞれの大学で利用している模様である。
2) 大学一学校現場のつながり
2002/ 200 3年度にはパイロット事業パートナー校は21校(中学校・高等学校)を数えるが,そのほかにも同事業に参加を希望する学校は多い。多くの希望校から数校に協力校を絞らざるを得なかった経緯がある。また中学校・高等学校が実験授業を 3 大学で実施するケースや学校見学の件数も劇的に増加した。
3) 県教育局とのつながり
県教育局(Dinas P&K Kabuapten/Kota) が現職教員研修の一環として,県下の初・中等学校の教員をグループで派遣し,その研修を対象3 大学に委託するケースが従前に比して増加した。
(5) 自立発展性
本プロジェクトについては,高等教育機関としての活動の継続を見込むことは妥当である。本プロジェクトでは「生徒中心型」「実験・体験重視型」の教育手法を導入・推進した。これは2004 年に初中等教育に導入予定の CBCと軌を一にする ものであり,今後ともこれらの授業・学習手法に対する需要は高い。カウンターパートは,これら手法を導入した学部教育活動を今後実践する意思を有するとともに,継続に必要な能力,経験も蓄積しつつある。またこうした継続的な改善の鍵となるリーダー的存在も各学部で認識されている。
DGHEは,本プロジェクト終了後も3年間の活動継続のための予算確保の意思を明らかにしている。また各学部長も,学部予算から本プロジェクト活動の継続資金を拠出する意思を明らかにしている。
翻って,CBCの導入を2004 年に控えている点(本格導入以降,現場学校からのアドバイス要請等に応えることが期待される),地方分権下における現職教員研修の制度的枠組みが未整 備・未提示である点に留意が必要である。この点については,特に地方における現職教員研修の普及という観点からは,予断を許さない。

15-4 総括
15-4-1 結 論
本プロジェクトは,インドネシアにおける理数科教育の質の改善に対し,効率的かつ効果的に 貢献しており,終了予定時までには,プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM )のプロジェクト目標,成果,活動は達成可能である旨,調査団・インドネシア側双方で確認した。よって,この技術協カプロジェクトは予定どおり2003年9 月末に終了する。
一方,調査団として,以下の観点から,小規模なフォローアップ事業を実施することを提言する。

(1)  能力資質重視型カリキュラム(Competency- Based Curriculum : CBC)の導入を2004 年に控えていること
本プロジェクトは「生徒中心型」「実験・体験重視型」の教育手法を導入・推進した。これは,2004 年に初中等教育に導入予定の CBCと軌を一にするものであり,今後ともこれらの授業・学習手法に対する需要は高い。本格導入以降,現場学校からのアドバイス要請等に応える必要性が高まっている。

(2) 地方分権化による教育セクターヘの影響
地方分権化後,現職教員研修は県教育局(Dinas P&K Kabua pten/Kota) が主として実施責 任機関として機能することとなるが,制度的枠組みが未整備・未提示であり,今後は,大学 が,各地域における教員養成機関の協力関係・ネットワーク形成に積極的に関与する必要がある。具体的な動向としては,現職教員研修の一環として,県下の初・中等学校の教員をグループで派遣し,その研修を対象3 大学に委託するケースが従前に比して増加している。
(3) 本プロジェクトの成果の普及
上記(1) 及び(2) の状況に伴い,本プロジェクトの多くの成果物は,県教育局,現職教員訓練機関(PPPG,BPG,MGMP 等)及び他の教員養成大学に普及され,かつ共有される必要性がより高まっている。

15-4-2 提 言
(1) 短期的提言(プロジェクト終了までの半年間)
1) フォローアップ事業に係るグランドデザインの作成
プロジェクトはフォローアップ事業の内容に関し,期間,プロセス,投入規模,開始時期,パイロッティング活動,地域レベル教員養成ネットワーク形成支援の実施等に係るグランドデザインを作成し,JICAインドネシア事務所に 200 3年 7 月末までに提出する。
2) 共通教科書作成の進捗確認
共通教科書作成が遅れているため,日本・インドネシア側双方で現状の進捗状況を確認 し,早急に遅れを取り戻すための手続きを図る。
3) 機材管理方法・メンテナンス情報を含めた機材台帳の完成
供与機材はすべて機材台帳の下で管理されているが,故障時に備えた連絡先等メンテナンス情報も追加する。
4) 国家教育省初等中等教育総局との連携強化
国家教育省初等中等教育総局へは中間評価以降,プロジェクトの進捗状況が報告されてい
なかった。パイロッティング活動など現場学校における活動が増加するなか,今後は同局と連携を強化する。
5) 成果物の大学課程全体への普及
プロジェクトの成果物を大学課程の全体へ普及するための具体的な計画を作成する。
6) パイロッティング活動の質に係る調査の改善
2001 年 2 月及び2003 年 3 月に,パイロッティング活動に係る包括的調査が3 大学及びパートナー校にて実施されている。今後は;管理グループ・クラスを設け,同活動に係る基礎調査,パイロッティング後の調査を実施する必要がある。これにより,パイロッティング方法論の効果を測る明確な指標が策定できる。
7) 他の旧教員養成大学 9 校におけるプロジェクト成果普及の確認
プロジェクト成果普及の確認のため,各大学が他の旧教員養成大9学校に送付した質問票 を回収し,その結果を基に,プロジェクトの成果を最大限に利用する方法を分析する。

(2) 長期的提言(プロジェクト終了後)
1) 予算の確保
国家教育省高等教育総局からプロジェクト終了3後年間は予算が確保される旨を確認し た。インドネシアは現職教員訓練のため,パイロッティング活動及び機材のメンテナンス等に対し,適切な予算を配分する。
2) 地方分権化における現職教員研修の組織化のためのモデル・ガイドライン作成
地方分権化後,現職教員研修は県教育局が主として実施責任機関として機能することとなるが,制度的枠組みが未整備・未提示である。よって,現職教員研修実施における教育関係機関の連携体制・組織化のためのモデル・ガイドラインを作成する。
3) 新カリキュラム (Competency- Based Curriculum: CBC) 用の教育手法の開発
大学はCBCを実施できる教員養成を行うため, CBCに沿った教育手法を開発する。
4) 理数科教育に係るナショナル・セミナーの恒常化
本セミナーは理数科教育に係る知識・経験の交換の場として効果的である。今後,国家教育省が中心となり,毎年同セミナーを開催するよう主催者となり,かつ予算の確保を行うことが望まれる。
5) 「質の改善」と「量の拡大」によるバランスのよい教育協力の実施
9 年制の義務教育の一環である中学校においても,依然就学率が低い現状があるなか,大学及び現場学校は,「質の改善」及び「量の拡大」の両輪を認識し,活動を進めるべきである。

15-4-3 教 訓
(1)  「大学間」及び「大学~現場学校」との連携の重要性
「大学間」の連携は,成果物の作成だけでなく,関係者の意識面においても連携機関全体に対 し責任感をもつことができ,効果的である。同様に,「大学~現場学校間」の連携は,両者にとって大変有効である。大学は,現場に直結した成果物の開発を行うことで,初・中等教育の改善に自らがかかわっているというコミットメントの意識が強化される。一方,現場学校においては,大学との連携は教授法の改善に対して強力な支援者が得られることを意味する。
(2) 効果的なプロジェクト実施体制
本プロジェクトは,各学科に垂直的な「ワーキンググループ」と学科をまたいだ水平的な「タ スクチーム」の両者をプロジェクト実施組織とし,縦と横の両軸から活動を実施したことが,効果的な運営につながった。
(3) 活動の実用性
プロジェクトは,現場で実際利用されているものから成果品を作成すべきである。例えば, 実験器具の材料なども現場の小・中学校,高等学校及び大学にて日常利用できる範囲のものにする。
(4) 日本側のリソースに基づいたプロジェクト・デザインの作成
本プロジェクトは,日本側の人材リソースが大学教員を中心に実施されたため,派遣期間が日本の大学の休み期間中に偏りがちであった。また日本人専門家の専門が教科教育ではないなどの問題が指摘された。プロジェクト準備期間の段階で大学のみならず,他のリソース(協力隊経験者,教育委員会,現場学校教員,コンサルタント等)を視野に入れた国内支援システムを策定すべきである。
(5) カウンターパート機関による評価指標の収集・確認
本プロジェクトは,カウンターパート機関である 3 大学が評価指標を基に活動のモニタリング・評価を行っていた。これにより,評価調査時には,詳細な内容の把握と効率的な調査が可能となった。

15-4-4  今後の取り組み(団長所感)
(1) 初中等理数科教育の重要性
インドネシアは,1994 年から9年制の義務教育を導入し,また,2004 年度からは,CBCの実施を予定している。それらの取り組みにより,従来の先生から生徒への一方的な講義や暗記による知識偏重型教育方法を改め,実験等を通じた確実な体験に基づく知識を先生と生徒との対話により確実に習得する初中等教育の向上をめざしている。
また,理数科教育は,ロジカルなものの考え方,「なぜ」を考える基本ともなり,今後,民主化を推進する際の基本的な考え方を育成するに際し非常に重要な分野である。世界的な学問の共通性も多く,同分野の教育の知見を多く有する我が国が,協力を実施するうえでも比較優位が高い。
しかしながら,同分野への協力は,今まで戦略的には,実施されておらず,個々のプロジェクトペースの協力に終始していた感がある。今後,同分野で展開している協力の方向性を総合的・包括的に検討し,個々の案件の連携・棲み分け整理,他ドナーの動向も視野に入れなが ら,戦略的な援助を実施すべきである。

(2) 地方分権化に沿った援助
インドネシアは,1999 年に地方分権化を進めるための法律第22 令を発布し,初等教育分野の行政主体についても,中央政府から,地方政府に移しつつある。しかしながら,その具体的な実施方法や各機関の役割分担もまだ明確ではない。そのなかで,本プロジェクトが推進しているパイロッティング活動は,中央と地方政府,高等教育と初等教育現場をつなぐ試みであ り,この試みに対するインドネシア政府の期待・信頼性については,インドネシアの本活動に対する将来的な計画・予算措置等からも推察される。本プロジェクトのフォロウアップを実施する際には,初中等教育の質の改善に関する関係機関・役割分担についても明確にしながら取り組む必要がある。

参考文献  〔Ⅳ. 中間評価および終了時評価〕

JICA: インドネシア初等中等理数科教育拡充計画運営指導(中間評価)調査団報告書,平成13年5月,2001a.
JICA: インドネシア国 初等中等理数科教育拡充計画 中間評価調査 コンサルタント報告書,平成13年4月,2001b.
国際協力事業団社会開発協力部:インドネシア共和国初中等理数科教育拡充計画終了時評価報告書,平成15年4月,2003.