ケニア訪問記 (2006)

竹中生徒会誌「潮」2006 ケニア訪問記 校長  下條隆嗣 仕事でこれまで北米,ヨーロッパ,アジアのいろいろな国を訪問したが,昨年(平成17年)12月12日~18日まで,初めてアフリカのケニアを広島大学教育開発国際協力研究センターの教授二人と共に訪問した。この時の体験談は,全校集会で「土産話」として披露したが,多少追記してここに記させて頂く。 今回の出張の仕事は,広島大学とケニアのケニヤッタ大学が合同で開催する小さな会議(ワークショップ)への参加であった。これは,日本の国際協力機構が実施している発展途上国の理数科教育の改善事業について,教室レベルの効果をはかる評価法を検討するもので,日本,ケニア,ガーナ,南アフリカ,フィリッピン,インドネシアから関係者が集まって催された。私は,インドネシアに長年関わってきた関係で,インドネシ...

新しい生き方-白秋歌碑を見て思う (2008)

〔生徒会誌「潮」2008〕 新しい生き方-白秋歌碑を見て思う 学校長 下條隆嗣 昨年の年末に休養のために岐阜県恵那市にある恵那峡を訪れた。恵那峡ダムの近くにある「さざなみ公園」で北原白秋の歌碑に出会った。 薄のにしろくかほそく立つ煙 あわれなれとも消すよしもなし 「ススキの野原にうつすら細い煙が立っている。きっと火がついているのだろう。ススキが燃えてしまつてかわいそうだが,消すこともできずどうしようもない」という意味であろうか。 白秋は幾度となくこの地を訪れたようだが,この歌を詠んだのは,ダムができる前かできた後かはわからない。ダムができる前はきっと川岸のあちこちにたくさんのススキ野が広がっていたのであろう。しかし今の満々と水をたたえた川の川辺にも枯れたススキの群落が小規模ながら点在している。 私はこの歌に出会って胸がキュン...

「和の精神」と教育 (2005) 

(附属竹早中学校後援会 創竹会 広報誌原稿2005) 「和の精神」と教育 学校長  下條隆嗣 本年も夏休み期間中に,国際協力機構(JICA)の初中等理数科教育の仕事でインドネシアにきている。プロジェクト開始前の調査に参加した頃から数えて10年ほど過ぎ,この国への出張も10回を下らない。当初は,ジャワ島内の3大学における理数教育学部の教員養成支援の仕事(学部の実験設備等の基盤整備や大学生用の教科書開発など)が主であったが,4年前程から,大学と学校とが協力して授業研究(「研究授業」を含む)の普及に力を入れてきた。その結果,最近ではこちらの大学教員も学校の教員も一緒になって,授業研究に熱心に取組むようになってきた。こうした活動を通して思うことは,日本において,授業研究は,授業の質の向上を通して,日本人の子どもの能力を引き出し,子ど...

これからの時代に生きる力 (2005)

〔竹早中学校広報委員会報「潮51」2005〕 これからの時代に生きる力 学校長    下條 隆嗣 二十一世紀に入って,早や五年が過ぎた。新しい世紀に入った頃は,二十一世紀の世界はどうなるか,どうすればよいかなど,ジャーナリズムでも取り上げられたり,いろいろな学会などでもよく議論されたと思う。しかしこの頃はあまり,そうした動きを聞かない。熱し易くさめやすい国民性のゆえかもしれない。しかし,これは重要な課題で,じっくりと追求すべきであると思う。 明治以降,日本は工業化社会に向けて走ってきた。しかし今は脱工業化社会あるいは情報化社会となり,これからは知識社会がくると言われている。一方,石油資源の枯渇,水不足,大気汚染など,現代人の生活の負の遺産が地球規模で現れている。地球環境を保全しつつ経済発展を実現するという「持続可能性」という...

附属竹早中学校としてのキャリア教育 (2004)

(竹中PTA会報,第86号(12)2004.12.20発行) 附属竹早中学校としてのキャリア教育   学校長  下條 隆嗣 昨今、新聞紙上で、「キャリア教育」という言葉や、学校におけるその実践例などの紹介もまま見られるようになってきた。「キャリア教育」は、学校において、児童生徒一人一人にふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てるという教育である。ここで、「キャリア」とは、「個々人が生涯にわたって行う様々な立場や役割の連鎖およびその過程における自己と働くこととの関係づけや価値づけの累積」(文科省)というのが一般的であろう。キャリア教育が問題視されるようになってきた背景には、少子高齢社会の到来、産業・経済の構造的変化とそれに伴う雇用の多様化・流動化等があり、就職・進学などの進路選択をめぐる環境の大きな変...

「学習意欲」と「目標」の持ち方 (2006)

(附属竹中生徒会誌「潮2006」) 「学習意欲」と「目標」の持ち方 校長  下條 隆嗣 近頃、教育関係者の間で「日本の子供達の学習意欲が減少しつつあるのではないか」という議論がある。また、最近、日本の企業の方から、「会社に入ってくる若者に対して企業が求める力についての近年の調査によると、最も強く求められる力は、基礎基本、創造性、やる気の三つである」ということを教えて頂いた。このように「やる気」(意欲)に関することが問題視されるような事態は、日本の将来に関わる根源的な問題であるので心配である。こうした事態の原因や克服の方法を考えたくなる。 昨年11月の全校集会でも少し触れたが、最近、意欲に関する研究をまとめた論文を見いだした。それは、米国のイリノイ大学のドウェックとハーバード大学のルゲットの二人によって20年程前に「心理学レビ...