(附属竹早中学校後援会 創竹会 広報誌原稿2005)
「和の精神」と教育
学校長 下條隆嗣
本年も夏休み期間中に,国際協力機構(JICA)の初中等理数科教育の仕事でインドネシアにきている。プロジェクト開始前の調査に参加した頃から数えて10年ほど過ぎ,この国への出張も10回を下らない。当初は,ジャワ島内の3大学における理数教育学部の教員養成支援の仕事(学部の実験設備等の基盤整備や大学生用の教科書開発など)が主であったが,4年前程から,大学と学校とが協力して授業研究(「研究授業」を含む)の普及に力を入れてきた。その結果,最近ではこちらの大学教員も学校の教員も一緒になって,授業研究に熱心に取組むようになってきた。こうした活動を通して思うことは,日本において,授業研究は,授業の質の向上を通して,日本人の子どもの能力を引き出し,子どもの可能性を伸ばすことに,かなり効果的であったのではないかということである。今では,授業研究は日本の教育文化であると思う。近年,米国などでも日本の授業研究の導入を試みている。そのことは,以前,ニューヨークにあるコロンビア大学を訪問した際に,米国の研究者から伺った。しかし,個人主義の強い国では,自分のやり方に他人が口を挟む事を好まない面があるので,その普及に困難が伴うようである。日本に授業研究が育ったことは,「和の精神」を基底に持つ極めて日本的な精神的風土によるのはないかと思う。改めて,日本文化の価値を認識した次第である。
(2005年8月21日。インドネシア,バンドンにて)